Doctor after death ♯1 | ぽんず出版社

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Doctor after death
第1話

宇崎大悟は平和の中にいた。
中流企業に勤めるサラリーマンの父と専業主婦の間に2人兄弟の次男として生まれ、愛情をたっぷりと注がれ育った。
両親は仲が良く、節約家の母のおかげで、金に困ることもなく、7つも年が離れている兄ともほとんど喧嘩はしなかった。小中高と公立校を進み、そこそこの大学を出て、中流企業に就職。その後も大きな失敗は無く、30回目の誕生日をそれまでと何の変わりもなく、平和に迎えた。
1つ、これまでの彼の人生で引っかかる所を挙げるとするなら、彼には未だ妻が居ないということぐらいだ。ルックスに大した長所は無く、体格も中肉中背、学歴や収入も抜きん出た所は無い彼は、いわゆる草食系男子というやつだった。もちろん彼女と呼べる存在が居たことが無いわけではないが、結婚に至る前に別れていた。
このことに、彼は焦りを感じることはなかった。なぜならアラフォーと呼ばれる世代になった兄信悟も同じく妻は居ないがそれなりに充実した人生を送っていたからだ。
両親とも少し早すぎる病死を遂げた。故に親の老後の心配もなく、彼らを焦らせる存在も周りには居なかった。
そんな彼に平和とはかけ離れた出来事が起こったのはある手紙を受け取った3ヶ月後だった。その手紙の内容を要約すると、「この手紙は未来から過去へと送っている。未来の地球は真人類と名乗る宇宙人に乗っ取られようとしている。奴らは気付かれないように1人、
また1人と人間を殺しては、その人間に成り済まし、入れ替わっていく。真人類から地球を救えるのはこの手紙を受け取った君だけだ。」となる。
もちろんすぐには信じられなかった。しかし、その手紙には幾つかの予言が書かれた物が同封されていた。いや、贈り主からしたら過去の出来事になる。中にはすでに起きたものや予想できそうなものもあったが、その日の予言はそんな類のものではなかった。地震だ。それも日にちを当てたぐらいじゃない。余震まで秒単位、座標もピタリで記されていたのだ。
その地震が日本に与えた影響はほぼ皆無だったが、彼の30年の平和は、地響きのような音を立て、崩れ落ちたのであった。
しかし、そんなことが起きてもすぐには信じられない。未来から手紙が送られてきて、しかもそれがSOSだなんて信じたくもないだろう。3日ほど自問自答を繰り返した大悟は信用できる3人の人物に相談することにした。
第1話終


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