「手つないでもいい?」



赤い顔をしてアキラが私に言う。



アキラと初めて出会ってもう一週間がたとうとしている。


あの日、尚とアキラと三人でカラオケに行き、電話番号だけを交換してすぐにわかれた。


なんか、あっさりだな・・。


期待したような展開がなくて少しがっかりしてたあの日。


そんな想いを打ち消すかのように、夜、アキラから電話がかかってきた。



3時間くらい話したかな。
話しの内容は意外で、私はアキラにますます興味が湧いてきた。


見た目は遊び人っぽいのに、実はずっと一人に片思いしてて、まだ誰とも付き合った事ないって事。



バイトでギャル服のショップの店員してた事あって女の子と話し慣れてるから、遊んでそうに見られて嫌だって事。



数カ月前に、好きだった彼女がモデルになるために上京して、最後に告白したら振られたからスッパリ諦めたって事。



なにもかもが意外だった。



最も惹かれたのは、私の過去を聞いて来ない所だった。



それまでに出会った男達は、すぐに下ネタ話ししてきたり、過去を聞いてきたりしてきてた。




あれから一週間、毎日3時間くらい電話してるのに一切聞いてこない。なのに会話が弾む。



いつからかアキラからの電話を楽しみにしてる私がいた。



そして、7回目の電話で、今から会う?と聞いてきたアキラに、ためらわず「うん」と答えた私がいた。







「手つないでいい?」


車に乗ってドライブしながら2時間ほどたった頃、アキラがそう言ってきた。




赤い顔のアキラ以上に赤くなる私の頬。



私はそっと手をだした。



繋いだ手は熱く、そっと握るそのアキラに、純粋さを感じた。



だからと言って、私の心にいた元カレがいなくなったわけじゃなく、まだ私は心のどこかで元カレを求め、心に空白があるままだった。





海で車を止めて散歩をしてる時、私は初めて自分の過去を口にした。

少し迷ったけど、私は尚と一緒にその友達に会いに行くことにした。



約束の場所へ向かう車の中、だんだん緊張してきた私がいた。





「あ、あいつもう着いてるな。」



ふと目をやると、約束の広場に、長身の男の子がたってる。




「プップー」




尚がクラクションを軽く鳴らすと、すぐに気がついて こっちへ向かってきた。





アキラ、18歳。B型。182センチ。


オシャレで、モデルのように目鼻立ちの整った男の子だ。




「こんにちは」



さわやかに車に乗り込むアキラ。



「ずっと、会ってみたかったんだ。やっと会えたね。嬉しいよ。」



女になれた感じのアキラ。




でも、嫌な気分じゃなかった。



むしろ、胸の鼓動が早くなってる自分を見透かされないようにするのに必死だった。






でも、このときは まだ 私の運命を左右されるほど 心が動いてるわけじゃなかった。







アキラ。


あなたは この時、私との出会いをどう感じていましたか?


あなたは 私と出会えて 得たものはあったのですか?







私は、生まれて初めて、人との出会いを    悔やみました ・・・・。  






私が空っぽな女になった理由。


そんなの、人のせいにするもんじゃないの分かってる。


今の私は、なるべくしてなったのかもしれない。



アキラと出会わなくても今の私は存在してたのかもしれない。


でも、私はアキラとの出会いで、手に入れたくてももう二度と手に入れる事の出来ないものをなくしてしまったんだ。




それは、1年前にさかのぼる。



「男、紹介してやるって!」


会うたびにそうせかす尚。


「だからぁ。紹介なんて嫌いだし。自分で見つけるし。」



「い~じゃん、い~じゃん。一回軽い気持ちで会うだけだって。」



「しつこいなぁ。ホントに必要ないってか、今は彼氏とかいらないの!」




「ま、また連絡するよ」




こんな会話が尚とのいつものパターンになってた。



もう半月になるかな。



どうも、どうしても紹介したいヤツがいるんだって。



でも、ホントに恋愛気分じゃないし。



っと言うのも、高校生の時ずっと付き合ってた年上の彼氏が忘れられずにいたから。


大学進学も、彼氏に結婚を申し込まれて「婚約」 という形で断念した。



愛してた。



今となっては、そんなセリフがふさわしい恋愛だったかと言えば違うかもしれないが、私なりに愛してた。



彼の言う言葉をスポンジのように吸収し、彼の言動に一喜一憂し、あの頃の私は彼色にそまっていた。


婚約までした彼との別れ。


理由は些細な、ホントに些細な事だった。



だからこそ忘れられず、どうにもならない想いを抱えて生活してた。




あの頃の私は、純粋で真っすぐで、、、そして弱かった。





「なぁなぁ、卒アルもってきたんだけど、こん中でタイプいない?」



翌日、また尚が来た。



「もぅ!ホント懲りないなぁ。いい加減にしないとマジで無視るよ。」



「そんな事言わず、これ見て。」



そう言って渡してきた一冊の卒業アルバム。


私はそれを手にとって開き始めた。


各クラス、およそ40名ほどで計8クラス。


一通り見て、一人、目をひくヤツがいた。



「う~ん。タイプってか、気になったのは一人しかいないなぁ。」



「どいつ?」



「3組の1番後ろの左すみの人」


「え???マジかよ。。。そいつだよ!紹介したいヤツって。前に、美咲の写真見せたら、紹介してくれってうるさくてさ。実は今日これから遊ぶんだ。美咲も来いよ!」






それがアキラとの出会いの扉だった。