第81話 "逆"一飯の義理【中編】
新入生側も不屈の闘志を以て対策を講じ、徹底的に勧誘する側の裏をかこうとし、斯くして壮絶な狐と狸の騙し合いが始まったのであります。語学は出席を取り終わった後、中座する、自宅へは真っすぐ帰らず適度に時間を潰した後、帰宅する、等々であります。
本格的な騙し合いとなりますと、組織の一員である団員は行動パターンが読まれやすい事に加え、団員は目立つ格好をしておりますので、新入生が有利となります。騙し合いが続く中、次第に新入生は自らの勝利を確信するに至りました。
そんなある日、家路につく新入生は、読み通り最寄駅~自宅付近の張り込みがない事を確認し、今日も勧誘を逃れた事に満足感を覚えつつ意気揚々と帰宅致しました。すると玄関先に見慣れぬ靴がある事に気付きます。その光り具合、先の尖り具合から嫌な予感を覚えつつも「まさか」との思いが拭えません。恐る恐る家に上がりますと
「おかえり」
と勧誘していた団員が茶碗片手にダイニングテーブルで夕食を食べているではありませんか。
しかも新入生の母親は、団員にお代わりの味噌汁を運びながら
「あんた、エエ先輩に出会えてよかったやないの」
と母親までが勧誘員と化しているではありませんか。当然のことではありますが、状況を理解する事に相応の時間を要し、ようやく事態を悟った彼は不本意ながらも入団を果たすのであります。【以下次稿】
と勧誘していた団員が茶碗片手にダイニングテーブルで夕食を食べているではありませんか。
しかも新入生の母親は、団員にお代わりの味噌汁を運びながら
「あんた、エエ先輩に出会えてよかったやないの」
と母親までが勧誘員と化しているではありませんか。当然のことではありますが、状況を理解する事に相応の時間を要し、ようやく事態を悟った彼は不本意ながらも入団を果たすのであります。【以下次稿】
甲南大學應援團OB
八代目甲雄会広報委員会