應援團交雄録【3】 竹山一信(後編)
前述の様に竹山氏は立命館大学空手道部のご出身であり「押忍」文化の権威でもありまして、挨拶、行儀作法にはうるさく、また酔いが回ってきますと、「おい、お前の團の突きを見せてみろ」と應援團の基礎鍛錬の一つである突きをやらされる事もございました。お手本を見せて頂いた事もあるのですが、すっかり酩酊状態でありながらも、酔いが覚めてしまう様な迫力満点の突きでありまして、練習不足を思い知る瞬間でもありました。
勉強会の会場である洛風書房は京都二条にありました。夏になるとその建物の屋上より大文字焼きで有名な五山の送り火の様子が良く見えましたので、酒と肴を持ち寄って夕方より大宴会が行われておりました。点火される頃にはすっかり酔いが回っておりまして、竹山氏は十八番である「狼の歌」を朗々と吟じるのでありますが、團の1回生に見せてやりたくなる様な力強い声でありました。

洛風書房は梁山泊の如き様相を呈していた洛中の虎の穴とも言うべき場所でありまして、勇名を聞きつけ京都を中心とした大学の應援團員や体育会クラブの部員が門を叩いてくる事がございましたが、想像を絶するシュールさに再訪する者は少なかった様に思います。継続して訪れていた顔触れは私共と某国立大学の應援團員などなど総勢で5名程度だった様に記憶しています。
日本男児、を強く意識しておられた氏には男らしい所作を学ばせて頂きました。卑怯な振舞には烈火の如く怒り、男と見込んだ相手には礼を尽くす、そんな生き様に大いに感銘を受け我が團の人間教育の場でその訓えは生きておりました。
たとえ地上から人類が絶滅しても、最後に生き残っているのはきっと竹山一信であろう、と言われた程、生命力に溢れた氏の訃報は未だに信じられない思いであります。
竹山一信氏のご冥福を衷心よりお祈り申し上げます。
~人生意気に感じては 成否を誰か論ふ~
甲南大學應援團OB会
八代目甲雄会広報委員会