第43話 スキー合宿異聞【2】
夜が更けても三武会(應援團・空手道部・少林寺拳法部)の面々は、アルコール分で温まってきた事もあって、舌は滑らかになる一方なのでありますが、そこは我が会のメンバー「男と女、どっちがトクか?」「猪木、馬場、もし戦わば」「かんなみ新地は本当におトクか?」といったところが代表的な議題だった様に記憶しておりますが、寒さに耐えながら静かに並ぶ他の学生達の目にはどう映っていたかを思うと汗顔の至りであります。
並んでいる最中の立ち居振る舞いはともかく、一番乗りで並んでおりますので、先着順である以上、スキー合宿には参加は出来ます。しかし合宿当日の方がスキー場並みの山あり谷ありの珍道中になるのですから、情けない限りであります。
さて、このスキー合宿ですが、参加要項をよく読めば分かる事でありますが、スキー初心者の方に手解きをする、という趣旨ではなく、ボーゲン程度が出来る方が更にスキーを楽しむ為のノウハウを身に付けるという目的になっております。
無論、単位欲しさに参加する三武会メンバーは一行たりとも読んでいる訳がございません。当日、合宿先である長野県に向かうバスの中で随行の体育教官と斯様なやりとりが交わされます。
「お前ら、大丈夫やろうな?」
「押忍、大丈夫であります!」
「かなり滑っとるんか?」
「……」
「まさか、スキーに行った事がないのと違うやろな?」
「押忍!そのまさかであります。しかしすぐに覚えますので問題ありません!」
教官殿は頭を抱えるしかありません。
甲南大學應援團OB会
八代目甲雄会広報委員会