本山村怪々奇團【27】 | 甲南大學應援團OB会のブログ「雲外蒼天」

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甲南大学応援団再建物語
~黄霧四塞すと雖も、上に蒼天なきに非ず~

第27話 愛しのキョンキョン(後編)


そんな感じで晴れた團員となった彼でありますが、言うまでもなく中山美穂も小泉今日子も大ボラであります。第一線で活躍中の今が旬のタレントが我が校の学祭に来る事などはまずありません。


そんな事とは露知らず、團室に置いてある昨年の学祭のパンフレットも見る事もなく、日々「キョンキョン♡」と心の中で唱え、彼は應援團修行に邁進していたのであります。

ある意味では立派な男で、その一念で、一人、また一人と同期が脱落してゆく中、日々を耐え忍び、夏合宿をも乗り切り、すっかり逞しい團員へと成長しておりました。

後期が始りますと、他の下級生は後期が始ったという現実に些か元気がないにも関わらず、彼の頭の中はキョンキョン一色で、一人、彼だけは生き生きとしておりました。


そんな常春の頭の彼も学園祭が近づき、学内には学祭に纏わる様々な催し物のポスターや立て看板が見られるものの、肝心の小泉今日子という文言が何処にもない事にさすがに疑念を覚え、思い余って自身を勧誘した先輩に尋ねます。

「押忍!先輩、キョンキョンはどのイベントに来るんでありましょうか?」

「お前はモノを知らん奴やなあ。あんな大物が来ると迂闊に宣伝したらパニックになるやろ?当日までは極秘や」

サラリと回答されたものですから、妙に納得し、尚一層、團務に励んでおりました。いずれはバレる事なのではありますが、後期は行事ラッシュで應援團も繁忙期であります。その慌ただしさを乗り切れば、あれだけ図太い神経の持ち主である彼は辞めはしまいと先輩は読んでいたのであります。


そして迎えた学園祭当日、無論、キョンキョンは来ず、彼が付き人兼警備を仰せつかったのは、講演会の講師で招かれた、その年「塀の中の懲りない面々 」で一躍、人気作家となった安部譲二 さんでした。キョンキョンが来ぬ現実に項垂れる暇もなく、我が團より遥かに厳しい修業を積んで来られた氏の付き人として、日常の團室と変わらぬ時間を過ごした次第でございます。

ちなみにその後、先輩の読み通り彼は團員として4年間を全う致しました。しかし学園祭シーズンになると、誰か贔屓のアイドルがゲストに来ないか、楽しみにしておりました。彼の事も安部さんに懲りない面々として書いて頂けないかと思う今日この頃であります。


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