最近、すっかり見かけなくなった物の一つにマッチがあります。かつては喫茶店などではそのお店のマッチが置かれておりまして、頂いて帰ったものであります。意外にマッチを買った記憶は殆どありませんが、何故か何処にでもあった不思議な代物でもございます。
かなり早い時期から巷には100円ライターが流通しておりましたが、マッチはしぶとく生き残っていた様に思います。なかにはロウマッチ と呼ばれるマッチ箱ではなく床や靴の裏なんぞで擦って発火させるタイプのものを愛用する映画スター気取りの者もおりました。
應援團では先輩が煙草を咥えると下級生は即座に火を付けるという運用が為されておりましたが、何故かライターではなくマッチを使用致します。しかも後ろ手で擦ってさっとお付けし、更に後ろ手で消火するという難しい事をやっておりました。マッチは発火と消火の際に煙と共に独特の匂いが発生しますので、それを先輩の前で出さないという配慮なのでありますが、新人はこの作業をスムーズにやれる様になるまで相応の苦労を致します。
故に團員のポケットには必ずマッチ箱は複数個入っているものでありますが、一日中、動いておりますので、汗などでマッチが湿ってしまい、なかなか付かないという事態は春先には見受けられます。またバス停等の野外でお付けする際は風という強敵がおります。これの事態も失敗を重ねながら徐々に対処できる様になって参ります。
例えばマッチは学ランのズボンのポケットより上着のポケットの方が湿りにくいとか、風がある時は2.3本を一気に擦るとか、それぞれに対処法がありますので、今時分の秋頃になりますと1回生もそつなく火付けはこなせる様になっております。
昨今の禁煙ブームの中、至る所で分煙化が進み、愛煙家は肩身の狭い思いをしている中、このままマッチという物が姿を消しはしないか、ふと気がかりな今日この頃であります。
八代目甲南大學應援團OB会広報委員会