團室がある学友会館の前は細い公道が南北に走っておりまして、その道を南に下ると、左手に図書館の裏側などを見ながら、数百メートルで体育館の裏口に至ります。秋、この時期には11月に控えた「乱舞の集い」に向けて毎日夕方4時10分より体育館で練習がいつ果てるともなく行われておりました。
この團室から体育館に向かう道沿いに金木犀が大量に植わっておりまして、この時期には辺り一面に独特の花の香りが漂っておりました。
もとより花に四季の移ろいを感じる様な風流な者は我が團にはまずおりませんでしたが、さすがに金木犀の強烈な香りに気付かない者はおりませんでした。金木犀の香りが漂って参りますと「いよいよ学祭シーズン、夕練の時期になってしまった」と暗澹たる気持ちになるのでありました。
この道を團旗や太鼓を担いで往復する訳でありますが、練習開始時刻の16:10は我が校の4限目の講義が終わる時間でありまして、練習場に向かう道には、授業を終えバイトに向かうのかコンパに向かうのかは分かりませんが、多くの学生が楽しげに歩いている中を行く訳でありますので、世の無常を知るのでありました。
練習へ向かう道中はこれから始まる練習に想いを馳せ、暗い気持ちになるものでありましたが、練習後の帰り道も下級生達の表情は一様に暗かった様に思います。練習の疲れと練習が終わった解放感でプラマイゼロになりますが、練習が終わった後も学祭前は事務作業が多く、残業せねばなりませんし、また気まぐれな上級生から「ワシは三宮に飲みにいくで。おーい、1回生、誰か付いて来い」とのご指名がかかる事もしばしばでありまして、いつになったら今日という日が終わるのか、と下級生達は肩を落とす訳であります。
今でも街を歩いている時に金木犀の香りが漂って参りますと、当時の事が走馬灯の様に蘇るのであります。
八代目甲南大學應援團OB会広報委員会