会社等では防火管理責任者を置き、いざという時の為の体制を整備しておく事が義務付けられておりまして、社命でその責務を負い消防署へ研修に赴かれたご経験のある方もいらっしゃる事でしょう。
我が團でも團室を大学からお借りしている訳でありますので、火元責任者なる者を置いておりました。当番等で團室にいる時間が最も長い下級生が任命される事が多かった様に思います。任命されますと名札 に火元責任者の札が自らの名前の前に入れられます。
名札は通常、幹部は「役職」「名前」の順に札が入れられてゆきますが、下級生は「○回生」「所属(親衛隊・リーダー部)」「名前」が並んでゆきますので、幹部の様に個人の為の札が入れられる事はございません。ところがこの「火元責任者」のみは、担当者の為の札になりますので、任命された職責はともかく、名札に「火元責任者」が入ると妙に嬉しそうな顔をしている者も出てくる訳であります。
とかく学年が一つ上がる、親衛隊に入隊する、幹部に就任する等、あらゆる節目で、それなりの手順を踏みたがるのが應援團の世界でありますが、何故か火元責任者にはそういう制度がございませんでした。ある日、突然、「お前が今日から火元責任者や」と一方的に先輩に任命されるだけなのであります。
故に火元責任者が交代せぬまま上級生になっても責任者を務め続けるケースが稀にございます。某團員氏は授業に出る時間を惜しんで團室にいる事を好む傾向があり、下級生時代、火元責任者に任命され、何と幹部になるまでその職責を全うしたのであります。よってこの時期、我が團に在籍していた團員は、火元責任者=某團員氏、という等式が鮮やかに脳裏に刻み込まれて居った次第であります。
そんな團員達も時が流れ社会に羽搏いたのでありますが、飲食店勤務をしていた元・火元責任者氏のお店に顔を出す殊勝な後輩がおりました。「先輩、久しぶりでんなあ」とか何とか言いながら旧交を温めておりましたところ、ふと店の片隅に目をやりますと「火元責任者 ○○」と元・火元責任者氏の名が書かれているではありませんか。食べた物を吹き出しそうになるのを堪えながら帰る後輩氏でありました。
八代目甲南大學應援團OB会広報委員会