かつ丼吉兵衛【下】 | 甲南大學應援團OB会のブログ「雲外蒼天」

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甲南大学応援団再建物語
~黄霧四塞すと雖も、上に蒼天なきに非ず~

そんな團員氏にも後輩が出来、昼に三宮を歩く事があると、得意気にかつ丼屋に連れて行くのが常でありました。「何でも好きな物を食え」と指示すると、厚かましい事では定評がある後輩一同は、当の團員氏でさえ頼んだ事がないダブルというとんかつが2枚乗った超大盛を何のためらいもなく頼んだりいたします。


ふと嫌な予感がし、先に後輩を席に座らせトイレで財布の中を確認する團員氏。その超大盛は当時で800円という、下積み團員にとっては高級なランチでありますので、一人500円で計算していた團員氏の目論見は外れ、自らが一食、抜かす覚悟を決めるしかありません。


昨夜飲んだ焼酎の赤玉パンチ割りのせいで体調が優れぬ、と後輩に言い残し、店から少し離れた場所で一服し空腹を紛らわす團員氏。しばらくして後輩達が食べ終わる頃にお勘定に舞い戻ります。なけなしの3千円を大将に支払いますと「まいど、おおきに!これお茶代の足しにして」と千円札とお持ち帰り用のかつ丼を手渡して下さいます。團員氏の猿芝居などお見通しなのであります。人の情の有難味を噛みしめる團員氏でありました。


その後も甲南大學應援團のバッジを付けた学ラン姿が店の前を通りかかりますと「おい、腹、減ってへんか?」と声をかけて下さったり、学園祭に差し入れをして下さったり、と実にお世話になりました。


その大将、実は当時、高校に入ったばかりの息子さんを應援團に入れたとの事でありました。

学ランは何処で作るのか?とか夏休み等はバイトで店に出ているからちょっとコーチしてやってくれ、とか店でお話しする度に色々と意見を求められたものでございます。

またお店で体格が良い近隣の高校の柔道部の学生がかつ丼を食べておりますと「おい、お前ら、大学に行ったら應援團に入ったらええぞ」と声をかけたりもしておられました。


そんな大将も今や4店舗を運営されるオーナー様でありますが、当時の事はよく覚えておられます。男のロマンが分かるかつ丼屋に是非とも一度、足を運んで頂ければ、望外の喜びとするところであります。


八代目甲南大學應援團OB会広報委員会