立ち食い蕎麦屋なのに蕎麦が食べられなかった初日。毎週木曜日は、揚げ物の日だとは知らなかった。

でもカツ丼は美味しかったな。カツ煮の煮汁もかえしや出汁に拘るとあんなに美味しくなるとは・・・。

 

気を取り直して、2日目。今度こそ蕎麦を。

さて、何をたべようか。

3月の〝ぶらり途中下車の旅〟で舞の海さんが食べた〝冷製シソベーゼ蕎麦〟も気になるが、それはレギュラーメニューだとか。〝限定〟という言葉に何故か弱いワタシ。期間限定の〝Boost immunity つけ蕎麦 〟(880円)に呼ばれた気がした。「Boost immunity」は英語で〝免疫力アップ〟。店主によると、免疫力アップそばは第3作目。今回は納豆のつけ汁だとか。これに決めよう。

 

 ついでに緊急事態宣言発出中でアルコールは提供禁止だが、おつまみとして人気の〝鴨肉〟(250円)と〝だし玉子〟(500円)を注文。

だし玉子は本来、夜のメニューだがお客さんが少なかったので特別に作って頂いた。

出て来たのが、これ。


 

蕎麦の上には、刻み海苔。

この写真ではよく分からないが、薬味に定番のわさびと納豆に欠かせない辛子が添えられている。

 

 納豆が入っているつゆには更なる免疫力アップを願って〝なめ茸〟も、そして生卵の黄身。

かえしは、〝御膳がえし〟。醤油のかえしに味醂を加えた甘めのつけ汁だ。納豆汁には御膳がえしが合うと言う。

通の食べ方は、辛子をつけ汁に溶いて、蕎麦にわさびをちょこんと載せて食べるといいらしい。

言われたとおりに、ずるずるっと。旨い!!

黄身はつけ汁に投入。白身は蕎麦湯の中へどうぞ。

離ればなれになったキミと白身。胃の中で再会なんだね。

鴨肉のおつまみも絶品。

 特別のだし玉子もジューシーで美味しい。

これで酒があったらなあ。この後、すぐに会議があるからあっても飲めないけどね(笑)

 ところで、ずっと気になっていた店名。

「蕎麦いなり」と言えば、一般的には、蕎麦寿司の一種でお稲荷さんの中に酢飯の代わりに酢漬けした蕎麦を詰めるものを指すが、その蕎麦いなりを置いている様子はない。

店主は笑いながら

〝いなり〟は〝異成〟なんですよ。それにワタシの苗字の稲澤のイナにも通じるし

外の看板の〝落款(らっかん)〟を指さして教えてくれた。

 商社出身の店主は、仕事で世界中を飛び回り、世界の美味しい食材を知り尽くしている。蕎麦屋をやるからには自分の経験を生かして他と異なる蕎麦をつくりたいとの思い。

 

店主は話をさらに続ける。

蕎麦屋をやるならこの場所だと思い、2015年に出店を決めた時、タッチの差で他人に取られてしまったんです

その他人というのが2018年にミシュランガイド掲載店になった〝中華そば きなり〟だった。

天才シェフの土橋健司さん。和食、ラーメン店など数多くの飲食店で修業をされた後、2015年に初めて独立したのがこの場所だった。店主は、土橋シェフのラーメンが大好きで駒込の〝きなり〟に通った。それと同時に、そばのイベントを一緒に開催した。そして土橋さんにもし移転する時は、連絡してください。このお店をボクが使いますから・・・。

 

土橋健司さんの店名〝きなり〟は〝事実は小説より奇なり〟から採ったそうだ。

店主が土橋さんに頼んでいたことは思いがけず直ぐに実現した。

2018年にミシュランビブグルマンを駒込のきなりが獲得するとさっさと東中野に移転してしまった。

店主は、居抜きで新店舗を借り受け、念願の蕎麦屋を開業した。

しかも土橋シェフは、醤油ラーメンの他に、駒込の人は塩そばが好きだからと塩そばのレシピも特別にいなりに残してくれた。

土橋シェフのラーメンをリスペクトする店主は、念願の店舗と大好きなラーメンのレシピのふたつを同時に手に入れることが出来た。そしてきなりにあやかった店名も・・・。

 

〝蕎麦いなり〟の悶絶二味(ふたあじ)は店主が世界にチャレンジしたい日本の蕎麦と既に世界で評価を得ている日本のラーメンの二つの味である。次回は、その驚きのラーメンについて報告する。

 

【お店へのアクセス】

東急バス(黒02) 二子玉川 ⇒ 目黒駅前

都営地下鉄三田線  目黒⇒巣鴨

徒歩           巣鴨駅⇒蕎麦いなり