サンマは目黒に限る
は有名な落語「目黒のさんま」の下げである。サンマという下魚(げざかな)を食べたことがない殿様が鷹狩りの途中で寄った茶屋で初めて食べたサンマの味に感動して言ったとされる言葉。殿様というのは三代将軍徳川家光。茶屋というのは爺々ヶ茶屋で、家光はこの茶屋の主人の彦四郎と仲が良かったらしい。サンマを食べたのは創作であろうが、この茶屋があったのが〝茶屋坂〟。そして〝権之助坂〟、〝行人坂〟の三つの坂は並んでいる。
この3つの坂がある場所は、江戸城にとっての要所であり、江戸の片田舎だったが、この辺りは江戸町奉行直轄であった。
ワタシが応援させて頂いている落語家の〝柳家権之助〟師匠と同じ名前の坂。二ツ目の名前〝ほたる〟から改名した時はびっくりした。もっとも師匠の権之助の〝権〟は彼の師匠の〝柳家権太楼〟師匠から貰った一字であり、同じく敬愛するアルフィーの〝坂崎幸之助〟から貰った〝之助〟で権之助坂とは全く関係がない。行人坂と権之助坂はJR目黒駅前で合流する。
この合流した地点にあるのが〝立食いそば 田舎〟。1968年に創業した立食いそば屋で、都内の立食蕎麦屋としては極めて早い時期である。半世紀超の時代の流れをこの店は見て来た。今でこそ、目黒駅周辺は瀟洒なビルが立ち並んでいるが、オープン当時は〝田舎〟という名前が似合っている東京の外れであった。現在の店主は二代目。話し上手な爺々ヶ蕎麦屋である。
この蕎麦屋で是非食べて欲しいメニューがある。
目黒だから、9月になるとサンマ祭りが開かれ、周辺の居酒屋などにはサンマのメニューが並ぶ。ここはサンマそばはないが、ここのアジ天そばがめちゃ旨い。
おっと、忘れていけないのは50円の味玉。
ワタシも慌てて追加した。
麺は一般的な立ち食いそばの典型のゆで麺であるが、この蕎麦にはこれがいい。
そして絶賛したいのは、このそばつゆの旨さだ。決して甘すぎず、このアジ天によく合ったつゆの味だ。
味玉付きアジ天そばが450円。アジ天そばは目黒に限る。
【お店へのルート】
東急バス(黒02) 鷹番⇒目黒駅前