ほぅ、と吐いた息が思いのほか白く


あたりの空気がまた一段、冷たくなった気がした


コートのポケットに両手を入れて、細やかな暖を取る


時折吹く強い風に肩を竦めながら、足早に歩く


マフラーの隙間から入る北風に寒気を覚えながら、足早に歩く


ふとした時に思い出す貴方の口癖


声はもう思い出せないけれど


私の手を握りながら
「どこにもいくなよ」と


その言葉だけ、いつまでも頭の中で反芻する


何も見えないと言いながら


手は虚空を掴み
不安定な足取りで前へ進む


「何も見えないの。」


自ら望んで目を閉じたのも忘れて


気怠げに始まる朝


昨日から切り替わらない気持ちを引きずり


無理難題は心の中で


顔を歪ませる。