[[良きにつけ、悪しきにつけ、変革にはある種の救いがある(旧アメリカ合衆国初代大統領ジョージ・ワシントン)]]


宇宙世紀0100(ゼロオーハンドレット)年12月31日、サイド3ズム・シティー中心街から歩いて約10分の少し離れた位置にジオン・ズム・ダイクン公園内で、列席者や遺族そして民間人の参列者が参加して執り行われている「ジオン戦没者慰霊墓苑」の式典場は、ズム・シティー中央気象局がコントロールする筈のメインサーバーがダウンした結果データリンクが、不具合を起こして時折強い横殴りの雨の中、黒傘の数がちらほら増えながらも厳かに開催されていた…。

取り仕切る当事国のジオン共和国ロベルト・リヒャインブルガ首相、バルルガイア副首相を始め全閣僚や地球連邦政府から、レイニー・ゴールドマン大統領以下政府高官数人さらに、地球連邦軍側は、ジーン・コリニー・ジュニア(2世)地球連邦軍統合参謀本部議長並びに各コロニー方面艦隊司令官以下幕僚数人が列席してジオン戦没者慰霊墓園を中心に多くのジオン共和国軍民が、参列し列を成して花束を献花台へ捧げた。演説台に立ちロベルト首相の決意ある演説が20分も過ぎた頃に、サイド3の宙域で戦端が開かれ、三者は真っ先に「ネオ・ジオン軍」の存在を疑い今後の展開を三者が水面下で動き始めた。ジオン共和国国防省高官から地球連邦政府高官並び軍幕僚へ必要と有らば共和国軍を連邦軍と共同戦線を敷いて此に対処するとの報告とロベルト政権のジオン共和国自治権返還に変わりない旨が通告された。コリニー統合参謀本部議長は、幕僚に対してジオン共和国国防省高官へ「共同戦線の必要はない」との旨を通告しつつ、速やかに現宙域より月面軌道艦隊及び各サイド方面艦隊の後退と「自治権返還後のサイド3の秩序回復を速やかに処理せよ!」と命令した。
サイド3の秩序回復とは、ネオ・ジオン軍の武装解除と復員を、サイド3で受け入れられるか否か地球連邦政府とジオン共和国政府間で、終戦処理の解決を水面下で探っていた。時はさかのぼること1ヶ月前、月面に本部を置く連邦政府と地球連邦軍の関係機関内の一室で、極秘交渉が開催されようとしていた。地球連邦政府代表ボルドー国務次官と政府高官並び連邦軍代表スプリクス参謀次官と幕僚数人そしてネオ・ジオン代表ハーネス次席文官並びネオ・ジオン軍代表参謀次官と幕僚数人に拠る折衝は、「ジオンの自治権返還に伴うネオ・ジオン軍の早期武装解除と帰還のサイド3受け入れ(終戦処理問題)」だった。地球連邦軍としては早期の武装解除を受け入れてもらいたい旨を通告したがネオ・ジオン軍は真っ向から拒否した。ネオ・ジオンのフォルスト・ハーネス次席文官は、そもそもサイド3のジオン共和国・母国を離れて数十年単位に及ぶ漂流生活に、今さら帰れないと云う軍民はかなり多いと言う声が上がる実情を報告し、「スペースコロニーを一基譲渡するか、あわよくばかつて生活と軍事拠点として連結した「モウサとアクシズ」を譲渡して頂けないかと逆に提案した。連邦政府高官は「論外だ!」と撥ね付けたが、連邦軍スプリクス参謀次官はネオ・ジオン軍とは名ばかりの「袖付き残党軍」の少数武装集団へ、モウサとアクシズを譲渡するのは比ヵ兵力を考慮しても問題あるまいと呑む方向へ纏め掛けた。しかし連邦政府ボルドー国務次官は、モウサの受け入れはともかくアクシズの譲渡はアースノイドから賛同を得られないと、頑なに受け入れを拒否した。また再現される可能性が非常に高い「アクシズショック」は、うやむやになって消えて「ニュータイプ論争の台頭への受け皿」へと発展しかねず到底受け入れられない提案だった。更に大統領の与党は、連邦議会で過半数を占めていないため呑んでも法案は通過しないのが現状、度々休憩を入れて連邦政府高官・連邦軍幕僚・ネオ・ジオン文官・ネオ・ジオン幕僚等は駆け引きを繰り返しながら、月面の連邦軍本部から視認しやすい位置のサイド3へ「スペースコロニーを一基譲渡する」と云う事で落ち着いた。また即時、武装解除ではなく段階的解除後、復員更に民間人等の参政権の復権も認めると締結調印され来たるべき宇宙世紀0101(ゼロワンハンドレットワン)年1月1日、ネオ・ジオン軍の事実上解散が決定していた。

サイド3の港口に最も近いロンド・ベル艦隊旗艦ラー・カイラムの隊司令兼艦長ブライト・ノア大佐(地球連邦軍総司令)が、艦長席から激を飛ばす「モビル・スーツ隊発進遅いぞ!何やってる!?」とオペレーターへ命令を急かししつつ副長のレーゲン・ハムサット中佐が「状況知らせ!」と命令を被せた。旗艦ラー・カイラムのオペレーター通信・索的班長ナビゲーターのトーレスやサエグサ等は、艦長と副長に急かされながらも冷静にディスプレイと格闘しながらMSデッキへ発進の指示を送信して行く。MSデッキは、臨戦態勢の状態下だが「グリプス戦役やシャアの反乱とラプラス事件」をくぐり抜けた歴戦の勇士で、各MS整備要員は針積めた緊張感と向き合いながらも余裕があり、MSの発進準備が急かされた。ラー・カイラムの艦内はエア(空気)が抜かれて無重力となり要員は、全員ノーマル・スーツを着用している。第1MSデッキ(右舷)カタパル側の統括責任者アンナ・ハンナ准尉の怒号が響き、男性整備要員等は四方八方へ身体を流す…宇宙世紀100(ゼロオーハンドレット)年も成れば女性が第一戦で活躍する場は当たり前の様に存在するが、外郭機動艦隊の様な特殊な環境化では珍しい方かも知れない。アンナ准尉もトーレス等同じ歴戦の勇士であった。背丈も身体も倍はある男たちを束ねる彼女は伊達に戦火をくぐり抜けていない!高いモチベーションと経験・高度な技術は、その階級が正に真の強さを証明していた。男性整備要員が「RGM-100aジェムス出せます!」と叫ぶと、アンナ准尉がすかさず「カタパルデッキへ誘導しろ!」と指示を出す。ジェムスのコクピットシートへ収まるナイジェル・ギャレット少佐はコクピットへ取り付いている整備要員と握手して、合図を返しコクピットを閉じたと同時にコクピットが3Dの360度オールビューモニター(全天視界画像)に切り替わりMSデッキ内の映像が投影される。ナイジェルが、パイロット・スーツ一のヘルメットバイザーを上げながら「あれから4年流れても戦争か…ワッツ…奴等は変わりたくないようだぜ…。」と、何の気なしに呟いた。4年前の「ラプラス事件」の戦闘介入で戦友を失った…ナイジェルは、戦友の死をムダにしないと心に誓い、ジェムスをカタパルデッキへ移動させた。ジェムスの右手にカスタムタイプ用ビームライフルを持ち左手は、専用シールドを装備、腰には予備弾装をマウントして、モビル・スーツデッキへ足を着けた。ナイジェルは久しぶりの戦闘に高揚感へ浸かり一呼吸して「ナイジェル・ギャレット、ウィーザード00(ダブルオー)出る!」と艦橋(ブリッジ)へ伝えてジェムスが、やや前屈み腰になるとナイジェルは、急加速の対G負荷が掛かりキーンと云う高音的機械音を鳴らしながら、急速に流れて常闇に消えた。各第1、第2MSデッキ作業要員はモビル・スーツから離れて各機発進態勢へ移行する。第2MSデッキからカタパルトへ移動したRGZ-99リガードが、ウェブライダー姿勢で発進を待つと、艦橋(ブリッジ)から女性オペレーターの顔がコクピット内の一部に映り「ウィーザード03(ゼロスリー)発進どうぞ」と促される。オスカー大尉が、コクピット内で高鳴る鼓動を落ち着かせた刹那「オスカー・シンドラー、ウィーザード03(ゼロスリー)発艦します!」と発した言葉と同時に起動したスラスターエンジンが点火して、程好い対G負荷をオスカーの身体が感じながらリガードは、轟音を響かせ勢いよくカタパルトから発した。続いてデニス中尉のRGM-89Sスターク・ジェガン「ウィーザード04(ゼロフォー)」とエリー少尉のRGM-89D高機動型ジェガン「ウィーザード05(ゼロファイブ)」の僚機が、カタパルトから急加速して発進、全面の宙域へ浮かぶサブ・フライト・システムMS長距離輸送機「ベース・ジァバー(通称ゲタ)」へ、たどり着き表裏へ着艦して発進した。第2MSスーツデッキから、発艦予定だったリガードのパイロット、シシィ・バイエルン中尉「ジュリエット7(セブン)」は待機命令が発せられた為に急遽、MSデッキ内へ移動させられた。シシィがコクピット内から艦橋(ブリッジ)へオペレーターを介さず直接問い合わせる「なぜ待機命令なのですか!?」コクピット内の360度オールビューモニター(全天視界画像)の一部にブライトの顔が映し出される「旗艦艦隊から全てのMS部隊を出してる訳ではない!艦隊防衛の編成部隊も重要な任務だ…冷静になれ!」と諭した。シシィはふてくされながらも「了解」と命令を呑んだ。シシィも今戦闘は、「シャアの反乱」以来の大規模作戦が展開している様な兆しがある事を感じて冷静になれない自分を少し恥じた。今度は直接艦橋(ブリッジ)へ繋げずオペレーターへ「待機命令了解」とだけ通信回線を開き伝えた。ナイジェルのRGM-100aジェムスのスラスターが加速して、ロンド・ベル第2軍艦隊群が後方へ流れて行った頃ナイジェルはヘルメットバイザーを降ろした。第3軍の宙域へ到達しようかと云う時に第3軍旗艦(ラー・ゼブラ)のオペレーターが「先の戦闘宙域で熱源反応あり!」とメンフィス軍長とピエッタ艦長へ至急電を読み上げた。メンフィスは、すかさず、「全艦隊対空防護急げ!」と命令を発令すると、どこに潜んでいるのか分からない敵へ目掛けて四方八方へ各艦船から二連装副砲が火を吹いた!ピエッタ艦長は「安易な発砲は控えて下さい…これでは的になります!」と具申したが、メンフィスはピエッタ艦長が先程の戦闘で慎重過ぎたから敵に翻弄されたと言わんばかりに全く聞き入れなかった。オペレーターが「熱源急速接近…本艦直上!?」ピエッタ艦長は天を仰ぎ思わず「抜かった!!!」と叫んだ。敵のミサイル群が雨霰(あめあられ)の様に艦橋(ブリッジ)へ降り注ぎ艦橋(ブリッジ)が爆発を起こしメンフィスもろとも消失した。彼は痛みすら感じない事がせめてもの慰めであったが、それに付き合わされたピエッタ艦長やオペレーター等は浮かばれぬ立場であった…。間一髪の所、第2軍所属のパワー中尉は艦橋(ブリッジ)から離れ、リガードのコクピットへ移った直後の爆発で九死に一生を得たが、爆風でリガードが跳ばされながらも急速にラー・ゼブラから離れると更なるミサイルが後を追い掛けて来た。ナイジェルがジェムスを更に加速させて、右手のカスタム対応ビームライフルのトリガーを弾く姿勢を執るスラスターの加速を急激に抑えながら360度オールビューモニター(全天視界画像)にミサイル群の予測画面が表示されるとミサイル群へ照準を捉えるがややぶれながら一撃を加えると半分ほどのミサイル群が爆発した。しかし残り半分がリガードを襲い掛かり、リガードが急転回して大口径ビームキャノンと二連装ビームキャノンを発射「段着、今!」と叫ぶと残りのミサイルのほぼ全部を片付けた。オスカー大尉がふと息を吐くと妙な感覚に捕らわれふいに後ろから殺気を覚えた瞬間ウェブライダー形態の直撃弾をまともに食らいウェブライダーの分離を余儀なくされ、モビル・スーツへ可変した。ナイジェルのジェムスがパワーのリガードへ接近しかけると、宙域から真っ逆さまに割って入り、長距離射撃を繰り出す謎の影に翻弄された。第3軍艦隊群は爆発の光へ強制的に飲み込まれて渦になった!光は360度周りながら急加速と急上昇を繰り返して、メチャクチャな運動に圧倒された。ジェムスとリガードの僚機は軍艦の残骸と隕石の隙間に、身を潜め事の成り行きを見定めた。ナイジェルは「モビルアーマー!?」と、考察しつつ第2軍の救援艦隊らしき艦船にも容赦なく長距離射撃の粒子の束を、降り注ぎ爆発の光を幾つも馳せた…。

モビルアーマーのコクピット周りは、光まばゆくパイロットのヘルメットへ幾つものコードへと繋がっている。思考や意識を奪われているのかパイロットの反応は鈍い一点呑みに集中させられ小さく言葉を発した「暗黒の…暗黒の…闇、闇闇。」と女性おぼしき声がコクピット内をこだまする。コクピット内は改良が施されて禍々しさを感じる。女性パイロットの光景を遥か遠望の宙域で戦闘もなく穏やかなコロニー群の一画に、旗艦レウルーラ(ブラームス)艦橋(ブリッジ)の窓越しの宇宙(そら)を見渡しながらスキゾ・フレニア大佐とハンナ・ライチュ作戦参謀長は、タブレット端末へ眼を定める。アンジェロ少佐は、上部オペレーターのディスプレイの戦闘展開図を眺めていると下部オペレーターは「第3段階の作戦は順調に遂行中」と報告を発した。フレニア大佐は、ふと微笑を溢して、ハンナ作戦参謀長は、上機嫌に舌を舐めながら「強化人間には、お似合いのステージです。まだ役に立つ代物(NZ-888ラファエル)だったのね」と満足感へ二人は浸る。私はアナハイムがこんな兵器を隠蔽してた事実を知り底無しのパイプに末恐ろしさを感じた。私が再興を目指した「ネオ・ジオン」の理想を遥かに凌ぐ事実に驚愕し、かつての「ジオン公国」を張る勢いで、袖付き残党軍の意識をも侵食されて行く勢いだった。フレニア大佐が振り向き私の方へ近付いて来る。「ご苦労だったアンジェロ少佐。これからは、私が指揮を引き継ぐ…貴官は「地球のジオン残存軍」を宇宙(そら)へ上げるサポートへ回って頂きたい…大切な任務だが、貴官へお願いして宜しいかな?詳しくは参謀次官から聞くといい」と静かに語りまるでフル・フロンタルの如く…静かな風が吹いた。アンジェロはその風に乗り清らかな声に包まれて、断る理由も失い命令を呑み込んだ。私の指揮下で現状動ける部下は、直属の親衛隊員しか存在しない…副官のセルム中慰と敬礼を返礼して、艦橋(ブリッジ)を後にした。艦橋(ブリッジ)から退出して作戦室へアンジェロとセルムが二人、通路側のグリップに身体を流しながらセルムが私へ訊ねて来た「少佐のお立場で地球残存軍支援なんてあり得ません!指揮を引き継ぐとは…解任!?ネオ・ジオンを今まで纏め上げて来た少佐を後方支援へ回すとは…」セルムが絶句して後の言葉は出なかった。私の副官として、今までよくサポートしてくれているありがたさを実感したが、フレニア大佐が「シャア・アズナブルの帰還」として袖付き残党軍内の一部で噂され始めた勢いは止まる事もなく大きく変わって行った。ジオンの自治権返還まで1日もないのにやはり「「シャアの亡霊」」の存在感・統率力」は、圧倒される…「私は決定権を失った」と不意に言葉が跳ねる…落胆しながらも信頼される部下が一人でも多くいる間にやれる事をやるまでだとセルムへ眼で投げ掛けた。セルムもまたシャアの亡霊の存在感に呑まれた一人…部下等は、やはり「ジオンの再興」を諦めていない…私もその一人だが現実の限界は近い事を悟るべきと頭に過った。作戦室で参謀次官と作戦会議中にセルム中尉の副官解任が通告され後任は付かない事も報告された。さらにアンジェロは先ほど参謀次官が作戦会議室で作戦概要の説明を受けてなん足る無謀な作戦かと落胆と、参謀次官へ視線を直視軽蔑したが連邦軍の容認に下で展開されるデキレースかと想うと呆気にも取られ無性に虚しさを覚えた。参謀次官とその幕僚数人は、生真面目に作戦室の机に地球のジオン残存軍が地上のどの地域に点在するかの予測図をディスプレイに展開させて私はそれを凝視した。宇宙(そら)への合流地点を月とサイド3の中間地点へ集結させる等通常では有り得ないが、これもジオンの自治権返還とリンクした連邦の策略の一貫と感じて参謀次官から命令遂行が発令された。地球では既に用意が完了して、私がフレニア大佐の命令に乗るだけのことだった。私は作戦室を後にした。私は、自室へ戻り3日分の携帯食料を携え予備の制服とフォルスター付の短銃を持ってから一人ガンルームへ直行した。既に親衛隊員のヘルムート大尉とモンケ中尉そしてシュタイナー少尉の3人がガンルームでパイロットスーツの着替えが終わって左足首に短銃のフォルスターを巻いている最中だった。ヘルムートとモンケは4年前の戦闘を親衛隊予備候補として参戦していたが、シュタイナーは今回が初陣だ。前回の戦闘ではパラオ住民の学徒出陣が動員されていたものの実戦経験はなかった。本来はマユコ・クーデンホーフ大尉が率いる親衛隊を自らがその役回りを持つとは、フロンタル親衛隊以来の感覚にデジャブを覚えた。それぞれ想う所はあるが胸に閉まって、各自端末機を作動させて作戦の最終チェックが終るとヘルメットバイザーを下ろしてガンルームを飛び出し各々の機体へ身体を流した。私の愛機「AMS-138クランケン・カッセ」は、クランケンハオスの発展型機だ。私自身は、ニュータイプではないが自らの能力を最大限まで引き出してくれる。かつてローゼン・ズールへ搭載されたサイコジャマーやインコム等の特殊装備はないに等しいが、圧倒的な存在感と力を秘めたネオ・ジオン(袖付き残党軍)の象徴を体現していた。私はクラッケ・カッセのコクピットのリニアシートに収まると、ハッチを閉じて全天視界画像(360度オールビューモニター)を起動させた。ヘルメットバイザーを上げて整備要員の誘導の下モビルスーツデッキへ足を歩めた。4年前の戦闘で左腕を失ってからは、操縦系統が改良されて右手だけで、あらゆる器機を操作できる様になった。ヘルムート等、親衛隊仕様のモビルスーツ「AMS-135クランケンハオス」もデッキへ流れ発進準備の態勢をとる。レウルーラからモビルスーツ部隊の発進は、本来大規模戦闘に限る想定だったがシャアの亡霊が現れて状況は変わった。私の立案したジオンの再興も修正か抹消された可能性すらあり得る。私の存在は組織の歯車としての扱いに落ちた。私はある意味解放されたと解釈して闇夜の宇宙を見た。整備要員からMS誘導棟へ合図視認のサインが伝わりクランケン・カッセが、カタパルトから急激に推し出されて加速と同時に各親衛隊のモビルスーツも発進して行った。

スキゾ・フレニア大佐が艦長へ発した「我々も動くぞ!」艦長は、不意を突かれた様な眼差しを大佐へ向けた。艦長は「と言いますと!?」と問いを返す。艦橋(ブリッジ)へすかさず艦長席の横に身体を流し割って入る様な形でスーツの紳士の声が飛んだ「大佐の存在を公にする。シャア大佐がジオン共和国へ帰還を果たした事実を宣言するのだ!」と返した。首席政治・外交参謀のカルザス・M・バイヤーは、艦長の問いに応えた。副長は、黙りを決め込み首脳陣の事の成り行きを見つめる。フレニア大佐の銀縁仮面が鋭い視線で射抜くが、艦長は注意深く言葉を選びカルザスとフレニア大佐へ返答した「既に連邦軍と戦端が開かれています。ジオン共和国民の支持は、この状況下で獲られるとは到底思えません…ジオン共和国の自治権返還迄のタイムリミットは当に過ぎていますし無謀です…共和国民の混乱を増長しかねません…アンジェロ少佐のお考えでは…」と更に言葉を繋ごうとした時にカルザスは「大佐の決定だ!」と語気を強めた。カルザスは「アンジェロ少佐は、親衛隊長として復帰された。我々は前進しなければ成らない…未来…ネオ・ジオンが存続すべく…艦長…キミにこの答えの意味が解らない訳ではなかろう…。我々は大佐と共に…再びジオンの再興を!」とカルザスは言葉を閉じた。艦橋(ブリッジ)に重い空気が滞留した。艦長の脳裏にはレウルーラへランチ挺で上艦の光景が浮かびフレニア大佐へ合流の挨拶の際に感謝の意を述べると小声でフレニアは「私は、シャア・アズナブルではない」と自らを凍てつく様な声で否定した光景がフィードバックしていたので、籠った声で最後に付け足しい気分に刈られたが、内部の流れの変化を悟って、艦長席の肘置きに腕を投げて拳を握りしめた。顔をやや傾げては歪み唇を噛みしめてみた、帽子の鍔で影に成った顔を、フレニアやカルザスは視認されずにすんだ。艦長は憤りを感じながらも命令には、逆らわず事の推移を見守りながら既にない時を待つ方を選んだ…アンジェロ少佐の出方を見る事に決めた。レウルーラから投影機材がバーニアを上下左右に噴射しながら四方八方へ飛び散る。ラー・カイラムが鎮座するであろう方向へデブリ(ゴミ)に成り済まして流れて行く。フレニア大佐以下首脳陣は、モビルスーツデッキ2階の大会議室へ集まり正装を調え文官・武官等高官一同が整列して演説開催の時間を待った。サイド3のジオン共和国ではロベルト首相の演説が終わり連邦軍代表のコリニー提督が、共和国民へ「過去を乗り越え未来へ足を踏み出してほしい」と在り来たりの言葉を投げ掛け共和国民の失笑を勝っている最中に、ジオン共和国中央放送局並びに全中継施設がジャックされた。映像は一瞬ブラックアウトして、突然「ネオ・ジオン(袖付き残党軍)の紋章」が、旗めく映像へ切り替わった。ロベルト首相やゴールドマン大統領が反射的に立ち上がり同様に共和国民も立ち上がって、演説側や左右に設置されているモニターへ映像を注意深く覗き込むと正装した銀髪をなびかせた銀縁仮面の男が深紅の正装に身を包みマントが翻えり映し出された。ラー・カイラムの前に転送された立体のホログラフが映し出され男の演説が始まる。「スペース・ノイドの皆様…私はネオ・ジオン統帥スキゾ・フレニア大佐であります。私は、宇宙世紀0100年(ゼロオーハンドレット)12月31日の今日ジオン共和国の自治権返還に於いて明確に反対を表明致します。スペースノイドの皆様は地球連邦政府がどの様な経過を経て誕生し、私達スペースノイドがスペースコロニーで誕生したのか?その経緯をご存知でしょうか?私たちの遠い祖先母なる大地・地球は、旧世紀時代に蔓延(はびこ)った民族紛争と宗派間対立、それに伴う先進国の代理戦争が、自然環境汚染と乱開発の連鎖、そして疫病の蔓延を呼び込みました。それら諸問題の解決名目的に連邦の前進機関に成る「世界政府」は、誕生したのです。世界各国の世論を喚起するため意図的に情報を操作して統一政府を誕生させました。国家・民族・宗教の垣根を越えて、かつて宗主国云われた国々は勝手に国境を引いた挙げ句に、民族や宗教を軍事力で新ためて纏めあげたのです。内戦・紛争は一時的に終結し、世界政府の誕生と同時期に世界議会が設立しました。世論は議会に対して「地球保全保護法案」を圧倒的多数で可決致します。しかし、一部の過激な偏向平和主義集団に拠って、核弾頭奪還事件誘発させ、一発の核弾頭の誤射は、究極的には、核戦争経と発展しました。世界政府は、旧世紀時代存在した国際連合の域を超える事はなくその権限は極めて限定的で、当時のアメリカ合衆国が有志連合を率いて、戦争終結へ主導的に立ち上がる始末で、戦火の拡大は地球全体へ飛び火して混乱は終息せず、人々は絶望と飢餓に苦しみました。人々の想いを胸に私の父ジオン・ズム・ダイクンの曾祖父、思想家ハロルド・エド・ダイクンは、今後、地球上で戦火が起きぬ様に救うべく強力な宇宙移民政策…即ち、宇宙植民地構想とスペースコロニー建設の創造を唱えました。世界政府は、当初世迷い言として耳を傾けませんでしたが人々を一つの潮流へ纏め共感されて行きました。世論に推された宇宙移民計画は世界議会の主要議題へ提案され「地球を救う」この一点に絞り可決しました。そしてハロルドに共鳴した与党院内総務ジャック・ヒューズマンとデギン・ソド・ザビの曾祖父で当時の野党院内総務ガルベロ・バト・ザビは、首相官邸を宇宙へ置く事を議会は認めました。与野党の垣根を越えた共同追提案が叶った瞬間でした。移民問題評議会初代議長リカルド・マーセナスは、ハロルドの構想を実現すべく議会の与野党へ根回しに奮闘して、初代首相へ選出されます。世界政府と議会は、首相官邸が宇宙へ置かれると同時にその役割を終えて解散し、新たに「地球連邦政府」は誕生しました。連邦政府は、地球の人口増加の抑止と、地球を救うと云う観点から、宇宙移民計画の発動を主導して、月面に開発従事者を送り込みつつ平行して、スペースコロニー建設は順次着手され、月の主要都市フォン・ブラウン誕生後、火星の開発と木星間のヘリウムガスの往来が可能な船団を造船し、飛躍的にコロニー開発が加速して行きました。
しかし連邦政府は、コロニー市民に対してシリンダー内へ住居に押し込み、各コロニーの参政権は有うしても、首長を選ぶ権利は与えることを否定し続けました。自治権を与える事も許さず連邦政府は、地球へ居残り、地球から宇宙を支配する特権階級だけが、地球に住み続ける歪(いびつ)な世界を誕生させたのです。かつて私の父ジオン・ダイクンが提唱した「コントリズムは、宇宙へ進出した人類が、新たな発展的な真人類へと成れるべき」と、政治改革を連邦政府へ求めましたが、道半ばで凶弾に倒れました。父の遺志を継いだザビ家一党は、理念を矮小化して、ジオン公国を騙り「ジオニズム」へと歪曲して、独立戦争を開戦しました。後に、ジオンは、敗戦の憂いと連邦の占領と云う屈辱を飲みながら紛(まが)いなりにも傀儡政府を存続させる事を連邦政府へ承認させて、一定の自治・独立としての体裁を整えました。現在の政府が、サイド3へと組み込まれた場合、ジオン共和国民は連邦の政策へ異を唱える事は不可能に成ることは明らかでしょう。連邦の傀儡政権で在ってもジオンが、唯一独立国家として存在するからこそ、これまで経済活動や移動の自由そして交渉の自由も存在し得たのです。ジオン共和国民が平和を望むことは私も理解しています…。休戦協定に異を唱えたジオンの意思を継ぐ者は後を経たず、戦闘は長期化して、地球圏の争乱は泥沼に及びました。コロニー落としに隕石落とし、地球に対して非道な行為は私の胸も痛みます。しかし変革は、時に傷みが招じます…我々が歩んできた道が正しいとは思っていません…が、放棄してしまえば終わりと云う事では、先人に倒れた将兵や国民に対してどう詫びたら宜しいのでしょうか!?ジオン共和国は、スペースノイドの未来を照らしているのです!此れから先も未来永劫へと真の自治独立を得る為に、私に再度、力を貸して頂きたい…私が全知全能を捧げネオ・ジオンとジオン共和国を統合した『真のジオン総帥』として国民を率いる人柱足らん事をお約束し諸君を導き来ましょう!」銀縁仮面が言葉を終えるとレウルーラ艦内からネオ・ジオン将兵の歓喜と正装した高官一同が起立して拍手を送る映像が映し出された。

コリニーは演説台でほくそ笑み幕僚等が小走りに演説台へ上がり付き添われながら降りた。固まって動じないロベルト首相の横を歩きながら「どうやらシャア大佐はジオン共和国との統合をお望みの様だ」と小声で呟くき列席へ戻り着席した。

(コリニーJr.提督(地球連邦軍統合参謀本部議長)、父親の面影を残し、ジオン共和国ロベルト首相へ最後の引導を渡す)

ロベルトは我に返りコリニーへ振り向き「ジオン共和国はネオ・ジオンの存在を認めるつもりはありません!」と強く否定した。ジオン戦没者慰霊墓苑に降り注いでいた雨はすっかり上がり日射しを取り戻していた。ロベルト首相はコリニーへ歩み寄る。コリニーが愛用の杖に両腕を乗せると提案して来た「では、現在、ジオン共和国のコロニーの間を進撃中のネオ・ジオン艦隊と交戦は可能と云うことでしょうな?」ロベルトは頭が混乱した。コリニーは言葉を繋ぎ「ネオ・ジオン艦隊は連邦軍へ攻撃を既に加えているが、更に状況を優位に立つ気でいる様だ…我々は、戦場の拡大を抑える為に大部分の艦隊に対して後退命令を発した…貴方方の手で始末すると云うことで宜しいかな?」と、最後は鋭い眼光をロベルトへ走らせた。ロベルトの額からに汗が走り、後ろへ一歩下がるとバルルガイア副首相が身体を支えた。バルルガイアはロベルトが演説中に起きたネオ・ジオンとロンド・ベルとの戦闘を一切黙認した。ロベルト首相は、バルルガイア副首相に説明を求めたが、首を横に振るだけで情報のないまま焦った。ネオ・ジオンとは云え同胞へ弓を引く事は共和国民の心理を強く揺さぶる。かつてグリプス戦役では連邦軍と共同戦線を張ったと聞いた事はあるが、自治権返還当日ではリアリティーに欠ける。連邦軍が同士撃ちを目論んでいたとはロベルトはコリニーの謀略へ上手く乗せられてしまったと悟った。そこへ更なる追い打ちが起きたヘルマー国防大臣が血相変えて走って来た「ロベルト首相!今すぐに首相官邸へお戻り下さい!ワ…ワルキューレが発動されて降ります…共和国軍部隊が内務省や外務省等主要官庁街・市街地を占領しつつ、旧ザビ派と旧ジオン派が共闘して全包囲されつつあります!一部の過激な市民は武装蜂起して一般市民を煽動し、ネオ・ジオンと共同戦線を張ろうと叫んでいます…目下ジオン警察…ことにズム・シティー警察は無関心を装い手出しをしてません…未確認情報ですが第2バンチ・ジンバコロニーの都市ランバは、ダイクン家の遠戚ゲルハルト家から摂政を推挙されて、臨時政府が樹立された様子です。共和国内の一部の知事は、ワルキューレに載っとりコロニー市民共々来れに呼応しつつあります。極右団体の宇宙(そら)の会は、艦船やモビルスーツの奪還を企てコロニー内外で蜂起しました。ロベルト首相、このままでは内部から政権は崩壊します!メディアの統制は現在機能せず放送局も外部からジャックされたままであらゆる通信機器はハッキングを受けて制御不能です!コロニー外の戦闘は共和国民の個人端末機で実情を晒されています。」と息が途切れ掛けながら60代後半の国防大臣は全部を吐き気出した。ロベルト首相の顔が傾き肩が震えた。ロベルトは、元袖付きメンバーだったが、連邦軍の計らいでこの事実を抹消されていた。その変わりに最後の首相へ成る様に裏取引させられ今の現職に至る。現在の袖付き残党軍の中にも知る同士は多い…ロベルトはかつてないほどに憔悴したが、選択肢はなかったジオンの自治権返還は既定路線で外れるなどあっては成らない。ロベルトが現れる前は短命ではあったが80代後半の元ジオン下院議長でリベラル派の重鎮バルルガイア副首相が政府を率いた。自治権返還の影の立役者はそのバルルガイア自身で私はそれに乗り掛けただけで、老人より若人の方が受けが良いと首相の座を譲られた。下院議員一年生が首相へ選出されるなどジオン議会史上前代未聞と当時のメディアはロベルトの清廉潔白を鮮烈に取り上げたが私の本性とは裏腹に現在の地位に至る。それでもバルルガイアはジオンの新たな「希望」と託したのだった。バルルガイアこそ真のジオン共和国民で、裏切れる訳ないとロベルトは決断したヘルマー国防大臣へ対して「ロベルト政権はネオ・ジオンをテロリスト規定する。ワルキューレは無効であると宣言する様にと通達しつつ、ジオン共和国軍はネオ・ジオン及びその艦隊に対して宣戦布告を宣言する!」と高らかに叫んだ。コリニーの微笑が一段と深く微笑んだ。

月の第3の都市アンマン。反連邦政府運動が一時期目立ったが、最近は治安の改善が成功して都市の再開発や金融街も活気を取り戻し始めた。都市の中心部から少し外れた郊外の一角に旧世紀時代の近代建築様式のクリニックが立っていた。診察室と住居が離れた室内廊下をカツカツと靴の底が鳴りドア前で止まった80代半ばの執事がドアノブを叩く「し…失礼します」と伝えながら応接間の大型テレビの様子を注意深く見る女性の後ろ姿はとても大きな損失を感じる。執事が「あ…アルテイシア様?」と問い掛けると振り向き「どうなさって?」と応えた。執事はハンカチを額に当てながら「お客様がお越しになさってお出でです」と答えるとアルテイシアは「そう…客間へ通して下さる?」と、応えリモコンを手に取って、大型テレビの電源を消した。執事は一礼して退席しドアを閉めた。「お兄様の意思が伝わらない…誰か見えない所で意図を引く者の姿を感じるわ」と旧世紀時代のアンティークに囲まれた調度品の応接間で一人粒やいた。コンコンとドアをノックしてドアノブを持ちドア明け広げると客間のソファーに腰掛けて居た女性らしき人物が反射的に立ち上がり掛けるとアルテイシアは制止し着席を促した。アルテイシアも女性の前のソファーに腰掛ける。女性が口を開いた「お屋敷まで入り込み、ご無礼を承知でここまで来てしまいました。」と話し始めるとアルテイシアは、「お気になさらないで…ミネバ姫」と口元に笑みが溢れた。女性はザビ家の遺児ミネバ・ラオ・ザビである。そして応対したアルテイシアは、ダイクン家の遺児アルテイシア・ソム・ダイクンである。ジオンの自治・独立の下に、地球圏を長期的に混乱の渦に巻き込んだ張本人の遺児二人が、今こうしてジオンの最後を語ろうとしている。皮肉な出会いである。アルテイシアは、ミネバと再会する事を予測していたかの様に話しを続けた「ミネバ姫もご聴きになられて?スキゾ・フレニア大佐の演説を?彼には兄の意思が伝わらないわ…彼自身は存在する人でしょうけどね」ミネバがそれに応じて「私は4年前シャアの再来と呼ばれた男フル・フロンタルと向き合いました。彼にはシャアの意思が在るように想えましたが、彼自身は器と規定して自らの存在を否定しました…フレニア大佐は、フロンタルの様な錯覚を覚えません…自らを否定も公的もしている抽象的な存在と想えます。私はザビ家の末裔としてアルテイシア様へお会いに来ました。シャアもジオンも終わりにしたいと思っています!4年前の様な戦火が再び起きない様に…ラプラス憲章が示した未来が必ず生まれる日を信じて…私は…」とアルテイシアが制止した。ミネバは自分が熱く成っている事に気付いた。アルテイシアは立ち上がり、医学書類に納めされた戸棚からブランデーを持って来た。重厚感あるテーブルにブランデー1本とグラスを二つ置いて「私は普段飲まなくてよ…ミネバ姫も飲めるお年頃ね」と、二つのグラスにブランデーを注ぐと瓶の口からトクトクと勢いよくアルコールが流れて客間へ程好いアルコールの匂いが漂う。一つのグラスをミネバの前にもう一つを自分の前に置いた。アルテイシアが言葉を繋いだ「私は政治向きではないの…だから以前は私の友人を別の形で支援したこともあったわ…一年戦争では連邦軍へ身を投じた時期もあった。戦火の中で兄と再会した事も…私の知るキャスバル兄さんではなくシャア・アズナブルとしてね…兄はジオンの軍人として戦いながらも、連邦軍へ身を置いた事もあった…しかしネオ・ジオンを率いる総帥として決起した…連邦政府の内部の腐敗に嫌気が刺してのことね…終戦直後には行方不明になって、私も複雑な気持ちになっわ…今、兄が居たらこの状況をどう観るかしら?ジオンの自治権返還の当日に「真のジオン共和国」を宣言するなんて全くナンセンスではないこと?」アルテイシアがミネバを見つめて話した後、両手を伸ばしてグラスを掴んだ。グラスを胸元迄近づけて「貴女の守り人はお元気かしら?」と不意な言葉を衝かれたミネバは「あ…ハイ。彼は車内に居ます…もう戦争とは関わりたくないそうです…」と、消える様な声で呟くと押し黙った。アルテイシアは胸元のグラスを揺らしながら更に言葉を繋いだ「貴女の知る人物も会いたがっていたわ…キャプテン。」ミネバは顔を上げて「ジンネマンは、アルテイシア様の下に!?」とアルテイシアは頷き「ジンネマン大尉は、別行動で事の成り行きの終結に向けて動いてくれています…そこに集う者はザビ家やダイクン家の集合体で既に本国内で最終段階の筈です…結局、私は観ているだけしか出来ない女なの…傍観者…ごめんなさいね」と、話し終えてグラスをテーブルへ戻し立ち上がり、客間の窓際に向けて歩き出した。外は夕焼けが人工的に作り出されている。月もスペースコロニーも地球の空を疑似体験出来る様に設定されている。窓際の下に車寄せがあり車内に居るであろう青年となった「ユニコーンの騎士」は、何を想うのかしらと心に問いソファーに腰掛ける大人になったミネバ姫をチラリと見つめラプラス憲章は50年云え、100年先の未来を変えられる望み…願う力になるはずよと自身にも問い掛け再び夕陽を見つめた。

ジオン共和国の首都ズム・シティー旧公国宮殿前で午前10時から開催されたジオン自治権返還式典は、既に夕方に差し掛かっていた。

サイド3の各スペースコロニー群は、地球と同様に擬似的な人工天候を作り出し、その間近に迫り来る、コロニー内の河と云われる強化ガラスがキラリと光るのを見つめていると、人の成せる技に改めて圧倒された。河には幾つもの橋が架かるのが見えて、眼を凝らすとエレカ(電気自動車)のテールランプの光とその周りの都市のネオンを一段と輝かせ平和を謳歌してるかのごときに、一瞬気持ちがぐらつく。私の居るべき場所はモビルスーツのコクピット…時々虚しくなる感傷に囚われた刹那、コクピット内の360度オールビューモニター(全天視界画像)の一部に旧ジオン公国軍パイロットスーツの風の会から「ネオ・ジオンの方聞こえますか?」と有視界回線が入る。マユコ大尉は、気持ちを立て直して「回線良好」と返答した。風の会が用いるモビルスーツは袖付き旧式の親衛隊仕様ギラ・ズールだ。ジオン共和国軍内では、新鋭機の方で、共和国解体の一週間の限定仕様と云うことで十数機の機体が、ムサカ級同様にアナハイム社から譲渡された。風の会は、アナハイム社から別ルートで機体を手に入れ、エース級の第一線で働いてもらえる様に配備された。「私たちが算出したルート並びに双方の展開図を、そちらに転送します!無謀であることは承知ですが、これが私たちの行動計画です。先ほど、スキゾ・フレニア大佐の演説を傍受しました…ミノフスキー粒子の濃さで、全てを聞き取れませんでしたが、素晴らしい演説です…「シァアの亡霊」は、私たちの耳にも届いています…ぜひ我々を信じて、このままコロニー群を突っ切て下さい!」全く無謀だ!と心の中で言葉が弾けた。アンジェロ少佐の意思が働いていることを信じて前進するしかないと、僚機へモノアイセンサーが移動して眩く光を帯びて、ジェネレータが唸りを上げ僚機より先に先行した。風の会の2機が、追い掛ける様に後へ続いた。


宇宙世紀0100年(ゼロオーハンドレット)12月31日夕刻、ジオン戦没者慰霊墓苑式典場は、列席者並びに共和国民がざわつく中で心静かなる日々は今だに遠い…。(第2章・幻惑、完結)


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追伸、ガンダム0100(非公式オリジナル小説)は、ガンダムUCの小説からの続編を展開させる予定でしたが、アニメ(映画)を観た結果、小説とアニメが混雑した状態で連載する事になりました(タイトルバックの編集者募集中m(__)m)