地球と宇宙に住む全ての皆さんはこんちは。


私は地球連邦政府首相リカルド・マーセナスです。


【地球連邦政府旗】





【地球連邦政府首相リカルド・マーセナス】





まもなく西暦が終わり、我々は宇宙世紀という未知の世界に足を踏み出そうとしています。
この記念すべき瞬間に、地球連邦政府初代首相として皆さんに語りかける幸福に、先ずは感謝を捧げたいと思います。


私が子どもの頃、首相や大統領が語りかけるのは自国の国民と決まっていました。
国家とは国民と領土の統治機構であり、究極的には自国の安全保障の為のみ存在するものでした。


今、人類の宿願であった統一政権を現実のものとした我々は、旧来の定義における国家の過ちを指摘することができます。


人間が一人では生きていけないようにまた国家もそれ単独では機能し得ないことを知っています。


ことに地球の危機と言う課題に対して、旧来の国家は何ら有効な解決策を示せませんでした。20世紀末から指摘され始めた人口問題、資源の枯渇、環境破壊による熱汚染…いまや後戻りの許されないこれらの問題を解決するには、我々ひとりひとりの意識改革が不可欠だったのです。


一国家、一民族に帰属する我ではなく、人類の主に帰属する我、この観点に立たない限り我々は今日と言う日を迎えられなかったことでしょう。


前身機関の設立から50年あまり、人類宇宙移民計画とともに歩んできた地球連邦政府の歴史は、決して平坦なものではありませんでした。国家、民族、宗教…これらの壁を取り払い、人類が本当に一つになるためにはまだまだ多くの試練を乗り越えなければいけないことも事実です。しかし今我々はスペースコロニーと言う新しい生活の場を手に入れました。間もなく始まる宇宙世紀と共に移民も本格化し、多くの人が宇宙で暮らすことを当たり前とする時代が来るでしょう。


これは人の重さに押しつぶされそうな地球を救うべく、人類が一丸となったことの輝かしい成果です。西暦と呼ばれた時期が人類が人類たるアイデンティティーを揺藍期とするなら宇宙世紀はその次を目指す時間となることでしょう。我々は産児制限によって人の数を減らすのではなく、て小さくなった揺り籠から這い出した赤子は、成長しなければなりません。


我々は、宇宙移民計画を実現する過程で、共通の目的の為なら一つに結束出来ると世界に証明しました。ではその次は?


宇宙世紀、ユニバーサルセンチュリー


字義通りに訳せば「普遍的世紀」と言うことになります。宇宙時代の世紀であるなら、ユニバースセンチュリーとするべきでしたが、我々は用法違いと思われる「普遍的(ユニバーサル)」を選び新しい世紀の名前としました。


私はかつてのアメリカ合衆国で生まれ、ドイツで幼年期を過ごし、フランスで少年時代を過ごしました。学生時代は、アジアで暮らし妻はアラブとヨーロッパのハーフです。私の両親も似たようなもので、先祖を振り返ると実に30以上の国の血が混じり合い、今の私が形作くられていることが分かります。あらゆる色の肌、あらゆる民族の血が私の中で息ずいているのです。その普遍的な出自から地球連邦政府初代首相の栄誉を授かることにもなったのですが、この様な背景を持つ方は他にも大勢いることでしょう。


21世紀から始まった通信技術の発達、相互依存経済に依る世界の並列化が、血と肌の混合を推し進めたのです。
連邦政府樹立による国境の無力化と世界標準語の制定によって、この傾向は今後ますます加速することと思います。
それはもう、何ら特殊な事ではありません。
宇宙で人が暮らすということ。その為に、全人類が一丸となって移民計画を推進してきたことも、また然りです。この奇跡を特殊な事例にしてはならない。
人類は一つになれると言う事実を普遍化し互いを拒絶することなく、憎しみ争うことなく、一個の種として広大な宇宙に向き合ってゆく…ユニバーサルセンチュリーと言う言葉にはそんな我々の祈りの言葉が込められています。
私はどのような宗教にも属していませんが、無視論者ではありません。高みを目指すため、自らの戒めとするため、己れの中により高次な存在を設定するのは、人の健康な精神活動の現れだと信じています。西暦の時代それは神の言葉としてさまざまに語られて来ました。人はどのように生きるべきか…いかにして世界と向き合うべきか。
モーゼが授かった十戒の例を持ち出すまでもなく、それらに対する教えはあらゆる宗教に伝えられています。人間の言葉ではなく、人と神の契約の説話として…今神の世紀に別離を告げる我々は、契約更新の時を迎え様としています。今度は超越者としての神ではなく我々の内に存在する神…より高みに近づこうとする心の対話によって…宇宙世紀の契約の箱は、人類がその総意から生み出したものであるべきでしょう。


この首相官邸の名前〈ラプラス〉の語源についてはご存知の方も多いでしょう。18世紀のフランスに生まれた物理学者の名前です。ラプラスは過去に起こった全ての事象を細大もらさず原子一個の動きに至るまで分析することで未来は完全に予測できると考えました。この考えは、粒子力学の発達によって否定され、今では未来を完全に予測する術はないとが証明されています。
我々はその経緯を逆説として受け取り、この首相官邸〈ラプラス〉の名を冠しました。


「未来にはあらゆる可能性がある」


と、言う意味を込めてのことです。ご承知の通り地球軌道上のステーションに首相官邸を置くには様々な議論がありました。交通の利便性や警備上の観点からすると確かに望ましい選択とは言えません。しかし我々は宇宙世紀に踏み出そうとしているのです。この宇宙こそが人類の新たな生活の場となるのです。その途上に立つものとして地球と宇宙の狭間に身を置かねばならぬこともあると思い、首相権限で此を押し通しました。


【首相官邸ラプラス】





(ラプラス)





(ラプラスの構造)





西暦最後の日、改歴セレモニーとともに宇宙世紀憲章を発表するのであればその舞台はここに置いて他にないとも考えました。
今日、ここは、地球連邦政府を構成する百ヵ国あまりの代表が集い吟味に吟味を重ねた宇宙世紀憲章にサインをしました。
間もなく発表されるそれはのちにラプラス憲章と呼ばれ、人と世界の契約の箱として機能することになるでしょう。


地球連邦政府の総意のもと、そこに神の名はありません。人類の原罪についても言及されていません。これからもし、最後の審判が訪れるとしたら、それは我々自身の招きに寄せた事実となるでしょう。すべては我々が決めることなのです。
今我々の目の前には広大な無辺な宇宙があります。あらゆる可能性を秘め、絶え間なく揺れ動く未来があります。どのような経緯でその戸口に立ったにせよ新しい世界に過去の宿業を持ち込むべきではありません。


我々はスタート地点にいるのです。他人の書いた筋書きに惑わせれることなく、内なる神の目でこれから始まる未来を見据えて下さい。


現在、グリニッジ標準時23時59分…。


間もなくです。


この放送をお聞きの皆さん、もしその余裕があるなら、私と一緒に黙祷してください。
去りゆく西暦、誰もがその人類の一部である歴史に思いを馳せ、そして祈りを捧げてください。


宇宙に出た人類の先行きが安らかであることを…宇宙世紀が実りあることを…。


我々の中に眠る、可能性と言う名の神を信じて…。(西暦最後の12月31日、地球連邦政府初代首相リカルド・マーセナス氏の演説より)


【貴婦人とユニコーン】





【スペースコロニー内部】





【宇宙世紀0001年1月1日、グリニッジ標準時0時00分「ラプラス事件」発生!】





Android携帯からの投稿


【機動戦士ガンダムUC】






【国際宇宙ステーション(ISS)、高度400キロメートルを周回する重力のない現在のラプラス(世界15ヶ国が、参加)】






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詳しくは、ニコ動、またはYouTubeを参照。


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