西暦2024年のはじまりに、イミナは思った。
「やっぱ、私って無力なんだなぁ」
だからこそ、何度も反芻した事実を思い出す。
目の前にあるできごとに専心するほかない。
一つずつ、一個ずつ。
自分は天才ではない。一足飛びに壁を乗り越えることも、突然降り掛かってきた火の粉を吹き飛ばすこともできない。
重たい身体を引き摺って這いつくばることしかできないし、火の粉が去るまでじっと身を屈めて堪えることしかできない。
大きな波が来たら容易に流される。流れ着いたところからまた再開だ。
日に日に、足取りは重く、目の前は暗くなる。
でもそんな凡夫にも、行きたい場所はあるらしい。
その場所は簡単に死と言い換えられるし、生きることは死に向かうことと同義だ。
行きたい場所はどこにあるかわからない。わからないから、同じ道をのたうち回るときもある。
地に腹をついた。口や鼻に砂が流れ込む。
ああ、でもやっぱり行きたい場所があるみたいなんだよなぁ。
それは希望ではない。希望は自覚することはない。
病のようで、呪いのようで、痛みを伴う。
行きたい場所はどんなところだろうか。
花が咲いているだろうか。
月が出ているだろうか。
眺めの良い場所だろうか。
草の枕はあるだろうか。