町田そのこ
楽しみにしていた町田そのこさんの本。
『52ヘルツのクジラたち』は衝撃的だった。
そして『夜明けのはざま』。
「死」「ジェンダー」「仕事」「生き方」「選択」…テーマとなりそうな言葉はたくさん浮かんでくるが、どれが一番ということではなさそうだ。
公式には「自分の情けなさに、歯噛みしたことのない人間なんて、いない。 死を見つめることで、“自分らしさ”と“生”への葛藤と希望を力強く描き出した」とある。
わたしには「死」が響いた。
ジェンダーの点では、男だから、女だからと言われない会社で男性と同じだけお給料をいただいているので、まだそんな風にいう風潮があるのかと自分の世界以外に目を向けられたように思う。
シングルマザーですし…。
「芥子の実」はいじめを謝罪した伊藤に腹を立て、須田の母と若き日の須田の姿を思って胸を痛め、須田の今に泣きそうになった。
一方で、「普通こんな会話はしないでしょ、、、」というご都合な描写ややり取りももちろんたくさんあった。
また、仕事をやり抜きたいから付き合っていた人との結婚を反故にするのもあまり想像がつかない。海外での活躍や今後訪れることのない仕事のチャンスなどならもう少しすんなりと理解できたかも。運命の仕事と運命の人の男女が分かり合えない描写には十分になっていたと思う。
それでも読み手の抱える仄暗い感情や思い出に寄り添い、力をくれる小説。
「大事なひとがどんな風に生きたいか、何をしあわせに感じるかなんて考えてなかった」
「でも、立ち上がれないひともいるよ。そのひとを喪う前の自分じゃなくなってしまうひとだっている。」
そんな考えもあるのか、と思えた言葉たち。
「ぼくたちはあまりにも、明日に任せすぎている」
これは、読み終えた今から胸に刻んで生きていきたい星の言葉。