産まれたときから、ほとんど泣かない赤ちゃんだったらしい。
体重も少なめで、そんなに元気そうではなかったようで、お父さんやお母さんは少しだけ心配したみたい。お姉ちゃんは2歳上で、活発な女の子。まあお医者様からは特に何もなかったから、そんなもんだろうって。
2歳くらいまで、ほとんどしゃべらなかったって。それどころか、あんまり泣かないしむずがらないし動き回らないしで。
この子はもしかして、なにか障害を持ってるんじゃなかろうか?
そう思うのも無理はないよね。お姉ちゃんは元気に幼稚園に通ってて、明るく可愛らしい。一方のぼくは、泣かないでじっと、テレビや(当時まだ白黒のブラウン管で、とってもおっきな家具調のものだったみたい)、新聞なんかとにらめっこ。
どう考えても普通じゃない。どうしたらいいのか分からない。手がかからないのはありがたい。うるさくしないのも助かる。でも、なんだかちょっぴり不気味で、変わった子だと思ってたそう。
病院で検査してもらおうかって話が出だしたころ。
突然しゃべりだしたぼくに、とってもびっくりしたって言ってた。
ほんとに突然、普通に、大人の人とおんなじくらい達者に、流ちょうに話し始めたぼく。
それまでとは打って変わって、とんでもなくおしゃべりで、なんでも疑問に感じてのべつ幕無しに質問攻めにあったお母さんは、対応に困り果てて自分も好きだった読書を、まだ2歳のぼくに、最初は付き添ってたんだろうけど、すぐに勝手にさせてたんだって。
ぼくが熱心に読みふけってたのは、原色大百科(ブリタニカ)、浮世絵図鑑、国語辞書。
大丈夫か、この2歳児。今ならおふくろに問い詰めてやったんだが。どう考えても変だろう、自分の子供の思い出として。だいぶ脚色して話してたのか、まったくのでたらめなのか。いずれにしてもこんな幼児、今の俺なら……。
閑話休題。
そうやってぼくは、2年間のブランク? をものともせずに、必要以上に知識と情報を頭に詰め込む幼少時代を過ごした。