1999年6月の博多座杮落し公演で当時の中村鴈治郎こと坂田藤十郎さんの京鹿子娘道成寺を観てから、玉三郎、勘三郎、福助、菊之助で何度も観てきたし、二人道成寺や男女道成寺も観て来たけれど、今月の右近の道成寺は初めての感覚、

去年の自主公演の時は頑張っていて見事だけれど頑張ってるねという感じで物足りなかったのに、一体彼は何段駈け上ったんだ!!


こんなに語るのかと、鐘供養の場での白拍子の花子の踊りという枠組みとそこからはみ出してくる🐍としての正体と、踊られる初めての恋を知った娘から女へと鮮やかな変化と、そして男への執着とも言える情愛

案珍に恋をして蛇になってしまった清姫の執念に、彼を焼き殺してしまってさえも自分に与えてくれなかった鐘への怨みの深さがあまりにも哀しくて恐くて、涙が溢れる道成寺なんて初めてだった

2014年3月南座での菊之助の道成寺が素晴らしくて、忘れられないのだけれどあの時も聞こうとしなくても自然と唄が入ってきて物語が見えたのだけれど、あの時の多幸感とは違う

でも陶酔とはちょっと違う、観ているだけで体温が上がり喉がからからになってしまう、まるで観客の興奮と熱狂を吸い込んでその身体からエネルギーとして放出しているようでもあった

特に幕見席や3階席の一番後ろから観ると客席の熱狂が渦を巻いてるのが見えるようでびっくり


まだまだバタバタしていたり、力任せだなと思うところもあるけれど、有り余る若さのエネルギッシュさと集中で、そりゃまぁ良く動く動く!!そして鍛えられた体幹でどの一瞬も絵になる!(舞台写真を全部買いたくなって我慢するのが大変)

歌舞伎座での初役の今だからこその道成寺だと思う、だいたい鐘に駆け上がるって初めて観たよ、その身体能力なんなの!


初めにこってりたっぷりのがんじろはんの花子を観ているので、大好きな演目だけれど物足りなさを覚えることもあったし、なんとなく惰性で楽しんで終わることもあるのだけれど、古典演目のポテンシャルをまざまざと見せつけられた気分


これからどんどん再演していって欲しい


そして早く鏡獅子も観てみたい