宝塚歌劇のHPにもバックナンバーが無い時代だった(笑)

当時に書き散らした感想ノートをそのままなので、色々ご容赦を💦

 

演出:菅沼潤

キャスト:汐風幸、貴咲美里、汐美真帆、未来優希

 

ラストの道行き、すべてはそれだけでもいいと思わせるほどの名シーンだ。名作で何度も再演されるわけはそこにあったのかと思う程に。同じ近松を原作とした蜷川の舞台と比べた時、脚本の甘さが気になる。台詞も全然洗礼されていない。宝塚の2枚目としての見せ場もと考えたのか忠兵衛の廓での振る舞いが粋すぎる。中途半端なシーンも多い。設定もなんだかおかしなところがある・・・。けれど、けれど、そんなことはもうどうでもいいのかもしれない。出演者も殆どが関東出身。関西出身は汐美暗いとあって、言葉の壁にかなり苦労している。それに加え娘役は遊女の衣装にも大変なようだった。色々とまだまだな点は多々ある。でもそこはまだ初日。これからどんどん良くなるのだろう。

汐風、まずこれほど美しいとは。とにかく日本物の鬘が良く似合い着物の着こなしの上手さよ。上方の若旦那の色気と甘ちゃんぶりをにじませ馬鹿な男を心情豊かに見せた。なんだかんだいってもいつも助けてくれる親友がいて、頼りになる番頭がいて、厳しく意地悪だけれど、店の事は頼りの養母に頼もしい実父、慕ってくれる手代と皆に守られて生きてきた忠兵衛が、結局なんとかなるかで、なんとかなってきた人生の中で運命の人梅川との恋が成就させられなかった時に、彼女と一緒になるために封印切りという大罪を犯し、心中という手立てしか思いつかなかった忠兵衛。それでも死の瞬間までも愛する梅川と一緒に皆のあたたかさを感じられた彼は幸せなのだろうと思う。八右衛門に借金を頼むシーンの甘えたぶりさえ可愛らしく、いじらしく、それだけに怒りと悔しさに任せて封印を切ってしまう時が哀しく痛々しい。歌も心で聞かせて胸を打った。

梅川、記載。まずはその美しさに驚かされた。キャシー以降全てが代表作とても言いたくなる程の充実ぶり。登場シーンで忠兵衛に甘える梅川の可愛らしい事よ。この一場面だけで忠兵衛と梅川の想いが十分伝わった。言葉、衣装の着こなし、課題はあるけれどそんなことはどうでもいい。忠兵衛といる時だけが幸せな梅川。遊女の生活に染まりながらも純真さを失っていない女。たとえ死への旅でも忠兵衛といるだけでとても幸せな彼女。男のためを思って身を引くことさえもできず、孫右衛門とのシーンでそれができるくらいならと泣き崩れる姿が涙を誘った。

八右衛門、汐美。彼女の存在がどれ程大きかったことか。廓遊びも粋にできて親友を思う優しさと厳しさのあたたかいこと。素晴らしかった。

未来、ラストの絶唱、これだけでも十分と思わせる。主人を慕う様が何気ない仕草に表れていた。

未沙、孫右衛門、凄すぎる!灯、かもん太夫、姿は良いが・・・。それにしても皆よく歌える。