今回はチーム制、初演から参加の安蘭けいのAチームでフルバージョン初見。
一幕からずっとダイアナの夫ダンが辛くてしんどかった。16年前のあの時にダイアナが病んだことで妻を支え続けている彼はまた、ダイアナ以上に深い哀しみに傷つきながら自覚することすらないままに、その傷ついてる自分を蓋をして生きてきたのだろうと。家族を深く愛してるが故に。
でも、その生き方は誰も救われないと
そういう意味でもラストは救いがあるかな。
岡田浩暉のちょっと鬱陶しさを感じる熱量の高い歌と芝居がダンの空回りの切なさを見みた。
安蘭けいのダイアナの説得力よ。建築を学んでいた時に予期せぬ妊娠の先の幸せからの悲劇。ふともし少しだけ運命が違えば彼女は太陽のような母親とバリバリキャリアウーマンになっていたのではという、どこか強さと明るさもある。だからこそ、この問題は特別なことではないと思うのかも。とうこちゃんの演じる母親はジェイミーにして肝っ玉母さんの大きさがあって好きだわ。ダイアナ酷い母親なんだけどね。
昆夏美のナタリー、BBもそうだが、親たちの問題が子どもたちにのしかかるのはしんどい。彼女にはピアノが救いになっているのかもしれないが、母からの愛に飢えて自分を見て欲しいと渇望しながらも母親を支える父を見捨てない。昆ちゃんナタリーの拗らせ感が凄い。けれど、どこか頑なさと度量の大きさを感じさせるところが、安蘭ダイアナと岡田ダンとの親子を感じた。
ヘンリーの橋本さんは初めましてだけれど、このキャラの強い実力者メンバーの中だと頑張ったねって感じになる。ダイアナとダン、ナタリーとヘンリーの関係性をシンクロさせてたけれど、この二人の先には幸せが見えなくて、拗らせたナタリーを支えるなんて若気の至りとは言えそんな安易なことでないぞと。ダイアナとナタリーを重ねてダイアナの母のPTAエピソードまで絡めて重ねられるのは辛い。
新納さんの二人の精神科医、最高ですわね。流石新納さん芸達者すぎるわ。大河ドラマで見ているだけに余計に感じるのかも。ドクター・マッデンのロックがダイアナが彼に何かを感じて衝撃を受けたということが明瞭なんだけど、とうこちゃんとにいろさんだからとにかく面白い流石です。
海宝くんのゲイブはやっぱり圧倒的に歌が上手い。まさにダイアナの理想の息子。自分を見ろ、消せないぞという圧が凄い。
けれど、この家族、このラストシーンの後もダイアナはそう簡単に良くならないだろうし、ダンから離れて行った先が実母では何の助けにもなりそうにないし、ナタリーが父親のもとに残るのも彼女の抑圧人生が続きそうだし、ヘンリーはまだ若いし子供なのだから逃げた方がよいし、そもそもナタリーもさっさと飛び級して大学へ逃げた方がいいと思うしと、しんどい未来ばかり想像してしまっていや~~しんどかった。
かろうじてダンが自分の哀しみと傷に向き合おうとしたことが救いかな。
それにしてもダイアナが薬をゴミ箱に捨てるシーンは恐かった。