何がきっかけだっからもう忘れてしまった。2015年、たまたま目に止まったクラウドファンディングは地下鉄サリン事件の被害者である監督がオウム真理教と地下鉄サリン事件の真相に迫るドキュメンタリーを製作するものだった。
反射的に支援をしてから、進捗報告はあるものの、なかなか公開という報告がないまま時が過ぎ、なんとなくこのクラウドファンディングの映画は夢物語のような気もしていた。
そして、ついに今年、あの事件が起きた3月20日に公開との報告メールが届いた。ここ最近報告メールは読まずに放置していたのに、なぜこのときのメールを読もうと思ったのか、虫の知らせか。
オンライン試写を申し込み、映画を自宅のパソコンで見る、辛くて一気には見られない、何度か中断しながら見終えた時、言葉は出てこなかった。言葉に出来なかった。
あの頃、オウム真理教はあまりに身近にあった。
大学の寮の先輩は信者だった。大学祭に来た麻原も間近で見た、一歩間違えば自分も荒木浩氏とともにあったかも知れないとの恐怖。そして身近で大好きだった人たちが出家したことをただ見てただけという棘か刺さったまま生きている。そしてこの棘は抜けることはないのだろう。
加害者側の荒木氏と被害者の監督との語らいは、信者もまたただの人間であるという事実と、それでもなお洗脳を振り切りこの日常へ戻ることの困難さを焚き付けてくる。
監督のさかはら氏と元オウムの上佑氏との対談本、昨日のさかはら氏のオンラインイベントに参加して、まだ思考はまとまらない、けれど考え続けることが唯一の正解のような気もする。
少しずつ、言葉をしていければと思う。