私が演舞場で観たのは菊之助さんがケガをされて4日後だったので、こうして菊之助さんが目指した完成形に少しでも近づいた形を見せてもらえるのはありがたい。
<配役>
ナウシカ:尾上菊之助
クシャナ:中村七之助
ユパ:尾上松也
ミラルバ/ナムリス:坂東巳之助
アスベル/口上/オーマの精:尾上右近
セルム/墓の主の精:中村歌昇
道化:中村種之助
ケチャ:中村米吉
ミト:市村橘太郎
クロトワ:中村亀蔵
ジル:河原崎権十郎
城ババ:市村萬次郎
チャルカ:中村錦之助
マニ族僧正:中村又五郎
ヴ王:中村歌六
前編の遠見のナウシカとメーヴェの宙乗りも嬉しかったが、なんといっても後編の所作事!!!あ~~やはり完成形が観たい。再演をぜひお願いします!
映像でアップで観ると改めて役者陣の素晴らしさに圧倒される。アップで観てもクシャナの美しさは壮絶だし、ユパはユパ様だし、この説得力ってなんなのでしょうね。
ただ、残念ながら舞台美術の美しさは生で観ないと伝わらないのね。特に幕開きのあの説得力のある美しい腐海は映像では無理か・・・。
右近のオーマの精の無垢な純粋さと優しさと、歌昇のセルムの清涼感と墓の主のそぎ落とされた孤独すら感じる迫力もすごいけれど、今回のディレイビューは最後全部種之助の道化が持っていったわ。実際観たときも素晴らしいと思ったのだけれど、後編幕開きの導入からして上手い、居ずまいが凄いね。そして墓の主が乗り移った時の変化。常に斜に構えてはぐらかして心のうちは見せずに、ただ一人真実をみている道化だからこそ、墓の主がその体を使って語ったのだと、でも彼の道化の中になヴ王への愛がある。
吉右衛門の墓の主が語るために乗り移ったのが種之助の道化で、その墓の主の精が歌昇でとかこれからの播磨屋を背負う若者たちということも泣けるわ。吉右衛門一人になってしまった播磨屋に歌六、又五郎(当時歌昇)が復帰したのは2010年のこと、あれから10年か。
綺羅星のように輝く花形たちが歌舞伎の未来を照らす。そんなことも感じたディレイビューでした。