厚生労働省は、2024年度の介護報酬改定で、訪問介護の

 

基本報酬を引き下げる方針を、社会保障審議会の分科会で

 

決めました。これに対して、委員から「在宅介護が破綻

 

する」という懸念の声が相次いだ、と報じられています。

 

医療や介護が必要になっても、住み慣れた地域で暮らすこと

 

ができるように支援する「地域包括ケア」を看板にしてきた

 

ことに反するのではないでしょうか。2024年の介護報酬

 

見直しでは、施設系サービスは基本報酬が引き上げられる

 

一方、訪問介護サービスは引き下げられました。各地で抗議

 

の声が強まり、「ケア社会をつくる会」など民間の5団体

 

が引き下げ方針の撤回を求める共同声明を出しました。日本

 

ホームヘルプ協会など2団体は、武見厚労相に対して

 

抗議文を提出し、「さらなる人材不足を招くことは明らか」

 

「訪問介護が受けられない地域が広がりかねない」と訴えて

 

います。介護業界は人手不足に苦しんでいますが、中でも

 

ヘルパー不足は著しく、訪問介護事業者の倒産件数は、昨年

 

過去最多を更新しています。厚労省は、引き下げの理由に、

 

経営実態調査で平均利益率が良好だったことを挙げている

 

そうですが、利益率は事業者の立地や規模によって差が

 

大きいとされています。利用者の家を一軒ずつまわる

 

ヘルパーは移動に時間がかかり、中山間地の集落などは

 

利用者の家が点在する地域が多くあります。厚労省は、数字

 

よりも、地域で在宅介護を支えてきた小規模事業所の実態を

 

よく見るべき、という意見に、その通りだと思います。

 

ヘルパーなどの賃上げを実施した事業所には、報酬を大幅に

 

加算する措置を設けたので、基本報酬を引き下げても、

 

加算分を受け取れば収入総額は増える、という厚労省の論拠

 

にも、首をかしげます。小さな事業所でも経営が成り立つ

 

のか、超高齢社会が進行中のこの国で、安心して在宅介護が

 

受けられる体制作りに、現場の実態を見ながら取り組んで

 

もらわないと困ります。それには、介護報酬を引き下げでは

 

なく、引き上げる必要があると思います。