政府は、昨日21日、全国漁業共同組合連合会の坂本会長と官邸
で面会し、風評被害や漁業者支援などの対策に全責任を持つと
して、処理水の放出への理解を要請しました。坂元氏は、「反対は
変わらない」と強調し、放出が見切り発車で始まる可能性が
高まったと報じられています。政府は、今日22日、関係閣僚会議
を開き、24日から放出することを決めました。処理水の放出を
めぐっては、安倍政権と東電が、2015年に「関係者の理解なし
にはいかなる処分も行わない」と福島県漁連に文書で伝えて
いました。2021年に菅政権が、処理水の海洋放出を決定しま
した。政府は、風評対策などに充てるため、計800億円の基金を
設置しました。また、国際的な理解を得るため、IAEA(国際原子力
機関)が、放出計画は「国際的な安全基準に合致する」とした包括
報告書を、今年7月に政府に提出しています。汚染水を保存する
タンクは98%まで使われていて、海洋放出をしないと、どうにも
ならない状態には、なっています。放出は、今後、数十年は続くと
みられ、漁連では、その間、補償の枠組みを維持し、モニタリング
で異常な数値が出たら、すぐに放出をやめさせるため、最後の
一滴まで反対し続ける、としています。ALPS(多核種除去設備)
で、62種類の放射性物質を取り除きますが、トリチウムだけは
残る、とのこと。原子力規制委員会は「人と環境への影響は十分
小さい」とし、国際原子力機関も、人や環境への影響は「無視
できるほど」としています。科学的には安全でも、人の安心とは
違います。坂元全漁連会長が「約束は破られていないが、
果たされてもいない」と答えていることが、複雑な立場を物語って
います。原発事故後、ようやく売り上げが戻ってきている生鮮魚
や生のホタテなどを、安心して国内外で食べてもらえるよう、
政府は、もっともっと伝える努力をする必要があります。すでに、
中国や香港などで、日本の水産物の消費が、大幅に減って
います。世論調査でも、半数以上の人が、海洋放出を認めて
いますが、政府の説明が足りないと7割以上の人が思って
います。きちんとした補償と、風評被害をなくす努力が一層必要
です。