岸田首相は、来年1月に見込んでいるバイデン米大統領との首脳
会談で、自衛隊と米軍の役割分担を定めた日米防衛協力指針
(ガイドライン)の改訂を提起する方向で調整に入った、と報じられ
ています。反撃能力(敵基地攻撃能力)発動時の共同対処を
盛り込む、とのこと。政府は、今日16日に反撃能力保有を記した
国家安全保障戦略など安保関連3文書を閣議決定しました。
日米防衛で、自衛隊は「盾」、米軍は「矛」として機能してきたもの
を、反撃能力保有で、米軍に依存してきた打撃力の一部を担う
ことになるため、日米の役割分担を整理する必要がある、という
ことです。反撃能力の保有を記した安保3文書の改訂は、安保
政策を大きく転換させますが、有識者の会合や与党の実務者
協議は、非公開で進められました。識者からは、「密室で決めて
おり、国民への説明がなさすぎる」など、国会での議論の不十分さ
を問題視する意見が、相次いでいます。このところは、防衛費
増額の問題にすり替えられているように感じます。敵基地攻撃
能力は、専守防衛から逸脱し、実質的な憲法改正にも等しい、
との指摘があり、その通りだと思います。こんなに大事な方針転換
を、国民のどれだけが理解しているでしょうか。もっともっと国会
での議論が必要なのに。そして、問題を矮小化させた、と言われて
いる防衛費の増額も、法人税を4~4.5%、所得税は1%、
たばこ税は1本換算で3円引き上げることを、2023年度税制
改正大綱に盛り込むことで合意しましたが、与党内の強い増税
反対論や拙速批判に配慮して、実施時期は「24年以降の適切な
時期」として明示せず、判断を来年に先送りしました。何をやって
いるのか理解に苦しみます。こんなに国民が理解できる議論が
ないまま、大事な問題が決められることに強い危惧を持ちます。