刑法の性犯罪規定のあり方を検討する法制審議会(法相の諮問

 

機関)の部会が、先日開かれ、法務省が見直しの試案を示し

 

ました。強制性交罪などで処罰できる要件について、被害者を

 

「拒絶困難」な状態にさせた場合とし、現行法で定める「暴行・

 

脅迫」のほか、8項目の行為・状態を例示しました。8項目は、

 

〇上司・部下、教諭・生徒といった関係性 〇心身の障害に乗じ

 

られる 〇アルコール・薬物を接種させられる 〇睡眠、意識が

 

不明瞭 〇拒絶するいとまがない(不意打ち) 〇恐怖・驚愕

 

(フリーズ)の状態 〇虐待による心理的反応がある 〇その他

 

です。見直し議論のきっかけになったのは、2019年3月に全国で

 

相次いだ4件の無罪判決でした。娘(当時19)に対する準強制

 

性交罪に問われた父親の事件で、名古屋地裁岡崎支部は、同意

 

がなかったと認めつつ、「極度の恐怖」を抱かせる暴力は受けて

 

いなかったと指摘し、罪の成立に必要とされる「抵抗が著しく困難」

 

な状態とは言い切れないと判断しました。こうした判決に対して

 

性犯罪の被害者などが実名で怒りの声を上げ、「フラワーデモ」に

 

つながりました。少し前進ではありますが、被害にあった当事者や

 

支援者たちからは、落胆の声が上がっています。法制審では、

 

性犯罪の本質は「被害者が同意していないにもかかわらず性的

 

行為を行うこと」と繰り返し確認してきたにもかかわさず、それが

 

明確に規定されていない、からです。法制審では、二つの処罰

 

要件案が俎上に載りました。A案は、「意思に反した」場合。B案

 

は、暴行・脅迫やアルコール摂取などの要因を例示した上で「拒絶

 

困難にさせた」とする。被害者側や一部の弁護士はA案を強く主張

 

しましたが、法律の専門家などは「内心を問うと処罰範囲を明確に

 

できない」「運用上ばらつきが生じうる」といった意見が優勢だった

 

と報じられています。試案はB案を採用しました。しかし、「拒絶

 

困難だったかが問われると抵抗したことを立証しなければなら

 

ない、これまでの運用が続くのではないか」と危惧されています。

 

スウェーデンでは、2018年の刑法改正で、相手から積極的な

 

同意を得ていない性交は「レイプ罪」と規定されました。性犯罪を

 

なくすために有効な法改正を望みます。また、処罰だけでなく、

 

性教育などを通じて、性犯罪についての認識を広げる必要があり

 

ます。