スペインのマドリードで開催された北大西洋条約機構(NATO)の

 

首脳会議は、先週、ウクライナに侵攻したロシアの脅威に対抗

 

するため、北欧での部隊増強などを盛り込んだ宣言を採択しま

 

した。ロシアのプーチン大統領は、北欧フィンランドとスウェーデン

 

の加盟を認めたNATOの合意について、両国にNATOの軍事施設

 

が置かれれば相応の対抗措置を取る、と警告しました。岸田首相

 

は、NATO首脳会議に、日本の首相として初めて出席しました。

 

欧州とインド太平洋の安全保障は不可分だと強調し、従来の日米

 

同盟に加え、NATOと連帯を築いていく考えを示しました。NATO

 

は、相互運用性の拡大に向けて、ウクライナ軍の新鋭化など

 

支援強化を決め、日本などアジア太平洋地域のパートナー国との

 

関係強化もうたっています。 中国が東・南シナ海や台湾周辺で

 

軍事活動を活発化していることに、欧州でも憂慮が広がっていて、

 

中国が突きつける挑戦への懸念が、初めて盛り込まれました。

 

フィンランドとスウェーデンのNATO加盟は、西側の集団防衛体制

 

に入ることを意味し、従来の中立政策を転換することになります。

 

ロシアとNATO圏が接する国境線も約2倍になり、ロシアがウクライ

 

ナ侵攻により、両国の信頼を失ったため、ロシアにとって狙いとは

 

違った方向になっている、と思われます。NATOが、中国に関する

 

踏み込んだ記述をしたのは、軸足をインド太平洋に移す米国への

 

配慮から、といわれています。日本とNATOの軍事連携は、中国

 

への抑止力を高めるのか、反動的な行動を助長し、地域の緊張を

 

一層高めるのか、懸念されます。欧州が軍事増強に動く中、日本

 

は、もっと国際協調を進める努力をすべきではないでしょうか。