生活保護費の基準額引き下げは、生存権を保障した憲法に違反
するとして、熊本県内に住む受給者36人が、熊本、荒尾など
県内4市による引き下げ処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、
熊本地裁の中辻雄一朗裁判長は、25日、厚生労働相による
引き下げの過程や手続きは「裁量権の逸脱または乱用で、生活
保護法に違反違法だ」として、処分を取り消しました。違憲か
どうかの判断は、示しませんでした。29都道府県で起こされた
同種の訴訟の10件目の判決で、処分取り消しは昨年2月の大阪
地裁判決以来2例目で、札幌や福岡など8地裁は、請求を退けた
ということです。厚労省は、2013年8月から3年間で、基準額を
平均6.5%引き下げ、計約670億円を削減しました。判決の
骨子は、〇熊本市などによる生活保護しの引き下げ処分を取り
消す 〇厚生労働相の引き下げ判断は、客観的数値との合理的
関連性や専門的知見との整合性を欠き、過誤、欠落がある。 〇
厚労相は、裁量権を逸脱、乱用したと言わざるを得ず、引き下げ
は生活保護法の規定に違反し、違法 というものです。また、
審議会部会などの検討を経ていないことについて「外部の視点に
全くさらされていない以上、客観性や合理性が担保されているとは
いいがたい」と断じ、政策決定過程の問題にも言及しています。
引き下げの根拠となる物価下落率の算定には、消費者物価指数
ではなく、厚労省独自の指数を用い、さらに特異な物価上昇が
あった2008年を起点としているそうです。これでは、引き下げ
ありき、といえます。私が厚労相をしていた2012年の社会保障・
税一体改革の審議の中でも、ちょうど有名タレントの母親が生活
保護を受け取っていた、というニュースも受けて、不正受給の是正
や、もっと厳しくするようにという意見が、当時野党だった自民党
などから再三出ていました。生活保護は、憲法に保障された
最低限度の生活を保障したものです。引き下げは、自己責任を
声高に主張する安倍政権に戻ってからの弊害といえると思い
ます。生活保護と最低保障年金の関係も含めて、検討する会議を
立ち上げるまでは、私たちの政権でしましたが、その後、そうした
話は聞こえてきません。しっかりとした検証、議論をしてもらいたい
と思います。