スウェーデンの王立科学アカデミーは、昨日5日、2021年の
ノーベル物理学賞を、真鍋淑郎・米プリンストン大上席研究員
(90)など3氏に授与する、と発表しました。真鍋氏は、大気の
対流などを考慮してコンピューターで気温の変化を予測する気候
モデルを世界で初めて考案しました。二酸化炭素(CO2)の増減が
気温に影響することを示し、地球温暖化に関する先駆的な研究が
高く評価された、ということです。ドイツのクラウス・ハッセルマン氏
も、気候変動(温暖化)予測についての研究分野を切り開いたこと
で。イタリアのジョルジョ・パリーシ氏は、気候のような複雑な現象
の理論づくりに貢献したことでの受賞、とのこと。おめでとうござい
ます!自然科学分野で、地球科学がノーベル物理学賞を受賞
するのは、1995年にオゾン層の生成や破壊の仕組みを解明
した研究者の例がありますが、極めてまれなことです。それだけ
現在の温暖化が深刻で、その危機感が高まる中、脱炭素を
目指す世界を後押しする強いメッセージになることを期待したいと
思います。真鍋氏は、この分野を開拓し、気候変動に関する
政府間パネル(IPCC)の報告書の執筆者にもなっています。
その後、多くの研究者が参入し、IPCC報告書も改訂を重ね、各国
が二酸化炭素(CO2)の排出削減策や温暖化に適応する方策を
考える際の基盤になっています。真鍋氏は、脱炭素に向かう世界
の動きの第一歩を切り開いたことになります。温暖化は人間の
影響だとする研究が積み重ねられ、2007年には、警鐘を
鳴らしてきたゴア元米副大統領と国連の気候変動政府間パネル
(IPCC)が、ノーベル平和賞を受賞しました。真鍋氏などの研究が
使われているIPCCの予測、今年8月の地球温暖化の科学的
根拠を示した報告書で、人間の影響であることは「疑う余地が
ない」と断言しています。それにしても、これだけ優れた頭脳が
海外に流出してしまう(真鍋氏は米国籍を取得)日本の基礎科学
を重視しない現状を、改めて突きつけられたように思います。