世界で人口に占める高齢者の比率が最も高い日本にとって、

 

介護の問題は喫緊の課題です。コロナ禍で、社会保障の議論が

 

進まないことを危惧しています。最近のニュースからみても、

 

ひとつは、介護職員の不足の問題があります。厚生労働省は、

 

先月、全国の65歳以上の高齢者数がほぼピークになる2040

 

年度には、介護職員が約280万人必要になる、という推計を公表

 

しました。介護職員は、現在も人手不足ですが、今後20年で

 

さらに深刻化するという見通しです。2040年度には、65歳以上

 

の高齢者は3921万人と人口の3分の1超になり、必要な介護

 

職員数は約280万人になりますが、69万人不足する、とのこと。

 

介護職員不足の背景には、介護職全体の賃金水準の低さがあり

 

ます。2019年度で平均給与をみると、介護職は28.8万円

 

と、全産業の平均37.3万円より8.5万円も低くなっています。

 

2019年の年収は、150万円以下が7割を占めているとのこと。

 

介護報酬の処遇改善策もとられてきていますが、その金が、施設

 

の中で、ほんとうに介護職員の給与に反映されているかは、明確

 

ではないのが、現状ですし、全産業との差を埋めるには、ほど

 

遠い状態です。人の命を預かる仕事なのに処遇が低ければ、

 

なりたい人が少ないのは、理解できます。利用者の自己負担が

 

引き上げられる介護報酬とは別に、処遇改善策として継続的に

 

公費を入れていく仕組みを作る必要があると思います。もうひとつ

 

は、特別養護老人ホームなど介護保険施設に入居する高齢者の

 

うち、一部の人が支払う利用料が8月から大幅に上がる、という

 

ことです。所得の低い人向けの食費・部屋代の補助が縮小された

 

ことから負担が増え、在宅介護の人が利用するショートステイにも

 

及ぶ、とのこと。介護保険施設の利用料補助は、住民税非課税

 

世帯が対象ですが、今回の見直しで、補助を受ける要件となる

 

預貯金の上限額(有価証券、投資信託なども含む)が引き下げ

 

られました。従来は単身世帯は1千万円(夫婦世帯2千万円)

 

でしたが、8月から収入に応じて単身世帯で650~500万円

 

(夫婦世帯で1650~1500万円)になり、補助対象外になる人

 

がでます。対象から外れると、食費や部屋代がすべて自己負担に

 

なり、最大で月額6.8万円の負担増になる見込みです。なぜ一気

 

に負担が増えるのか疑問に思う人が、多いようです。社会保障を

 

維持するために、所得が高い人には応分の負担をしてもらう、と

 

いう方針のもとでの見直しだと思いますが、社会保障改革は、

 

常に行い、わかりやすく説明していく必要があります。国会は

 

閉会中ですが、コロナ対策など目先の課題に加えて、超少子高齢

 

社会の社会保障の改革など大事な課題について、もっと積極的

 

に、わかりやすい議論をしてもらいたいと思います。国会を閉じて

 

いる場合ではないのでは、ないでしょうか。