病気で子宮がない女性が出産できるようにするため第三者の
子宮を移植する「子宮移植」について、日本医学会の検討委員会
は、一昨日14日、条件付きで実施を容認する報告書をまとめ
ました。これを受けて、慶応大のチームは近く、生まれつき子宮
のないロキタンスキー症候群の女性などを対象に子宮を移植する
国内初の臨床研究の実施計画を同大学の倫理委員会に申請
する方針、と報じられています。提供者は、患者の母親など親族
を想定している、ということです。がん治療などで、子宮を失った
20~30代の女性は、国内に約6万人いる、とされています。
こうした女性にとっては、子どもを持てる新たな方法といえます。
一方で、病気の治療とは違う出産のために、健康な提供者から
手術で子宮を摘出することへの慎重論もあり、私もそう思います。
子宮移植は、スウェーデンで2014年に初めて成功した新しい
医療分野、ということです。子宮を移植して定着を確認した後、
事前に体外受精させ凍結保存していた受精卵を移して出産を
目指します。16ヶ国で85例の実施報告があり、40人が生まれて
いるそうですが、成功例は半数に満たず、有効性が高いとはいえ
ません。日本では、臓器移植法の対象外なので、生体移植に
ならざるを得ず、子宮摘出手術は大量の出血が伴う恐れがあり、
安全性でのリスクも高い、ということです。費用も2千万円とも
いわれ、高額という問題もあります。女性は、「子どもを産んで
一人前」といった、古い考え方で、無理に行うことがないような配慮
も必要です。今回は、代理母などの生殖医療とは切り離して検討
した、ということですが、本来は、合わせて選択肢とするのがよい
と思います。日本には、生殖医療や生命倫理に関する法律が、
ありません。諸外国では、憲法に規定している国、基本法を作って
いる国などがあります。クローン禁止法を作る時にも、それが
ネックになり、結局、技術的に禁止することを規定し、「生命の
萌芽であるヒト胚」ということばを、何とか考え出しました。子どもの
親を知る権利などもきちんと議論をして、生殖医療の基本法を
作れば、生体移植というリスクを伴う方法だけではなく、選択肢が
広がると思います。