2013~15年の生活保護費の基準額引き下げは、生存権を

 

侵害して違憲だとして、大阪府に住む受給者など42人が国と

 

府内の自治体に1人1万円の慰謝料や引き下げ処分の取り消しを

 

求めた訴訟の判決で、大阪地裁(森裁判長)は、22日、「引き

 

下げは裁量権の逸脱や乱用があり、生活保護法の規定に反し

 

違法」と判断し、原告39人に対する処分を取り消しました。

 

これは、同種の訴訟で初めての取り消しで、生活困窮者への

 

公的支援制度に影響を与える司法判断になりそう、とされて

 

います。厚生労働省は、控訴を検討している、ということです。

 

厚労省は、2013年8月から、3年間で基準額を平均6.5%、

 

最大で10%に及ぶ引き下げを実施しました。判決理由で、森

 

裁判長は、引き下げに関し、①世界的な原油価格や穀物価格の

 

高騰で、特異な物価上昇が起こった2008年からの物価の下落

 

を考慮 ②物価下落を生活扶助基準の改訂に反映させた際、

 

総務省公表の消費者物価指数ではなく、厚生労働省が独自に

 

算定した指数を使用 などの点を問題視した、と報じられて

 

います。厚労省の指数は、テレビやパソコンなど教養娯楽用品を

 

基にしたため下落率がより大きく、「統計の客観的な数値や

 

専門的知見との整合性を欠き、最低限度の生活の具体化という

 

観点から、判断の過程や手続きに過誤や欠落がある」と指摘して

 

います。昨年6月の名古屋地裁では、原告の主張を退けていま

 

したが、今回は正反対の判決になりました。生活保護は、菅首相

 

が、最近、国会答弁で活用を促しましたが、親族に扶養できるか

 

問い合わせたり、自治体によって厳しすぎる認定があっらたり、

 

必要な人の約2割しか受けていない、といわれています。それで

 

も、私が社会保障と税の一体改革の特別委で答弁していた頃の

 

2012年に、お笑い芸人の母親が利用していることが報じられ、

 

バッシングが起きたりしています。その後に、民主党政権から自公

 

政権に戻り、基準の引き下げが行われました。これまでも、保護

 

基準の算定法が問題視されてきました。生活保護基準額は、国の

 

公式な貧困ラインで、個人住民税の非課税限度額、最低賃金、

 

家計が苦しい世帯への就学援助など、多くの制度が、直接、間接

 

に保護基準に連動、参照する仕組みになっています。その引き

 

下げの影響は、多くの人に及ぶことになります。その基準は、

 

きちんとした納得のいくデータを使い、専門家の意見も聞き

 

ながら、改めて作り直す必要があると思います。