米製薬大手ファイザーは、20日に、開発中の新型コロナウイルス
感染症ワクチンの緊急使用許可を、米食品医薬品局(FDA)に
申請した、と発表しました。欧米メーカーによる規制当局への申請
は初めてです。年内にも許可が出て、実用化される可能性が
ありますが、希望する米国民に普及するのは、早くても来年春
以降という見方が強い、と報じられています。FDAは、来月10日
の諮問委員会で外部の意見を聴いて、安全性と有効性を評価
する、とのこと。使用が許可されれば、米政権は24時間以内に
出荷させる方針ですが、供給量の制限もあり、高齢者施設の
入所者や医療従事者などを優先して接種することになるそう
です。ファイザーは、日本政府と6千万人分の供給で合意して
いて、日本や英国などでも申請していく計画、とのこと。1人2回
接種で今年は5千万回分を、来年は13億回分を製造できると
しています。ファイザーは、18日、ワクチンが発症を防いだ
有効性は95%とする臨床試験の最終段階の結果を公表して
います。倦怠感、頭痛などの比較的重い副作用が報告され
ましたが、深刻な懸念はない、としています。しかし、効果がどれ
だけ持続するかは、わかっていず、大規模な接種が始まってから
新たな副作用が明らかになる可能性も指摘されています。また、
ファイザーのワクチンは、零下70度程度での保管が必要で、一度
解凍すると5日間しかもたない、ということで、輸送や保管の課題
もあげられています。厚生労働省は、18日、衆院厚生労働委員
会で、ワクチンが承認されたら、同意が得られた人に、1万人規模
で、一定期間、健康状態を報告してもらう安全性調査を検討して
いることを明らかにしました。開発が先行しているワクチンは、
メッセンジャーRNAと呼ばれる人工遺伝子を使うなど新技術を取り
入れたものが多く、臨床試験を経て承認されても予期せぬ安全性
の問題が起きる懸念があります。ワクチン開発の期待から経済の
先行きに楽観論が強まり、日米の株価が急上昇していますが、
株価の過熱を警戒する見方もあります。国会では、国の全額負担
で接種を進めるための予防接種法改正案が審議されています。
前例のない速さで開発が進むワクチンを優先的に使えるように
する代わりに、重い副作用で被害が起きた場合、患者の救済措置
とともに、製薬会社の損害賠償を国が肩代わりし、免責する規定
が盛り込まれています。また、法改正されれば、ワクチン接種に
国民の努力義務が生じます。田村厚労相は、個々の意思に
委ねると説明していますが、同調圧力が強まる懸念もあります。
これまで開発されたワクチンで、最も短い期間が、おやふくかぜの
4年です。あまりに拙速にせず、効果と安全性を、しっかり見極め
てもらいたいと思います。