非正規労働者と正社員の待遇格差をめぐって、退職金や

 

ボーナス(賞与)を支払わないことの是非が争われた2件の訴訟

 

の上告審判決で、最高裁第3小法廷は、昨日13日、「各企業など

 

における賞与、退職金の性質や支給目的を踏まえて検討すべき

 

だ」と判断した、と報じられています。その上で、今回のケースは

 

「不合理な格差」には当たらないとし、退職金や賞与の支払いを

 

命じた二審判決を変更しました。退職金の格差に関する最高裁の

 

判断は、初めてのことです。退職金に関する東京メトロ子会社

 

「メトロコマース」の元契約社員の訴訟では「退職金は労務対価の

 

後払いや、継続的な勤務に対する功労報償など複合的な性質が

 

ある」と指摘し、正社員への登用制度が設けられていたことを

 

踏まえて、請求を棄却しました。林裁判長など4人の意見で、

 

行政法学者出身の宇賀裁判官は退職金を支払うべきケースだと

 

する反対意見を述べました。二審東京高裁は「正社員と同じ基準

 

で算定した額の少なくとも4分の1すら支給しない場合は不合理

 

だ」としていました。賞与に関して判断した大阪医科大の元

 

アルバイト職員の訴訟では、賞与は労務対価の後払いや功労

 

報償の趣旨があり「正職員としての職務を遂行できる人材を確保

 

し、定着を図る目的で支給している」としたうえで、二審の大阪

 

高裁判決が「賞与が正社員の支給基準の6割に満たない場合は

 

不合理だ」と約109万円の賠償を命じたものを変更し、夏期

 

休暇を与えなかったことに対する5万円の支払いを命じました。

 

宮崎裁判長など5人一致の結論でした。この二つの判決は、現在

 

働き方改革が進められ、曲がりなりにも安倍政権で「同一労働

 

同一賃金」がうたわれて、非正規労働者と正社員の基本給、

 

賞与、各種手当、福利厚生なども含めた考え方や格差の例を

 

厚生労働省が指針にまとめている等の、格差是正に逆行して

 

いて、納得のできない判決だと思います。労働法の水町東大教授

 

は、労働法20条(契約社員やアルバイト職員など有期契約で

 

働く人と正社員との間で、労働条件の「不合理な差」を禁じた

 

規定)の解釈として問題のある判決だ。計算方法や支給の

 

実態を踏まえて判断するべきで、そうした主観的な意図を認めて

 

しまえば、脱法行為が許されることになりかねない」としていて、

 

その通りだと思います。この判決は、労働者より経営側に重きを

 

置いたもので、二審などで少しずつ進んできた格差是正を否定

 

するもので、残念です。非正規労働者は、労働者全体の約4割に

 

なっています。超少子高齢社会のトップランナーの日本としては、

 

労働力人口(20~65歳の労働力)が、年々1%ずつ減っている

 

のですから、多様な働き方を、公正な報酬で進めていかなければ

 

社会が成り立たなくなると考えています。時代を逆戻ししたような

 

判決には、憤りさえ感じます。菅政権も安倍政権を引き継ぎ、同一

 

労働同一賃金を推進するのなら、もっと明確な指針などを出して、

 

企業に働きかけていくことが必要だと思います。