国連は、2度にわたる世界大戦の反省から創設されて、75年に
なります。新型コロナウイルスへの対応や地球温暖化(気候変動)
への対策など、国際協調が求められるのに、今月始まった国連
総会では、米国と中国・ロシアの間で非難の応酬になってしまって
います。トランプ大統領は、演説の中で一貫して中国を批判し、
コロナを「中国ウイルス」と呼び、「国連は責任を取らせるべきだ」
と述べました。首脳が、名指しで他国を非難しない総会の外交
儀礼をあえて破った、と報じられています。トランプ氏の演説は、
11月の大統領選むけといわれていますが、不毛な批判合戦の
責任があると思います。中国の習近平主席は、演説で、名指しは
避けながら「ドン・キホーテのような矛を振り回す」と米国を批判
し、多国間主義を強調してみせた、とのこと。ワクチンや資金の
提供、温室効果ガス排出ゼロ目標も示しました。米国の指導力
低下と孤立は、中国やロシアにとって影響力拡大の好機となる、
とされています。フランスのマクロン大統領は、「米中対立だけに
世界が要約されてはならない」として、国際協力の枠組みの構築
を欧州が主導する姿勢を示しました。日本は国連中心主義を
外交の軸の一つとして、分担金も3位であり、しっかりと責任を
担うべきです。ところが、日本では、コロナ禍での国連機関WHOの
対応への批判が強まっていることが影響したのか、この夏の調査
で、国連を否定的にみる日本人が急増し、肯定派の比率は米欧
を含む14ヶ国中最低だった、ということです。国連機関に問題が
あることは事実ですが、戦争への反省から作られた国際機関で
あり、自国第一主義ではなく国際協調の場ですから、率先して
国連の機能強化に努めるべきだと思います。菅首相は、総会での
リモートによる演説の冒頭で、多国間主義を強めるための連帯を
呼びかけました。それに沿った外交を進めてもらいたいと思い
ます。総会に参加した、加盟193ヶ国が、全会一致で「多国間
主義は、選択肢ではなく、必然である」とする共同宣言を採択
したことは、一筋の希望だと思いますから。