米最高裁の女性判事ルース・キンズバーグ氏が、18日、すい臓

 

がんによる合併症のため、首都ワシントンの自宅で死去しました。

 

87歳でした。キンズバーグ氏は、リベラル派の判事として、女性

 

や障害者、性的少数派、環境派の権利拡大に力を尽くし、第二次

 

大戦後の米社会を切り開いてきた闘士だった、と報じらて

 

います。近年はがんの手術をたびたび受け、入退院も繰り返して

 

いましたが、「新大統領が就任するまで、私の後任をつけないこと

 

が、最も切実な願いだ」とする遺言を孫に告げ、また保守派の

 

判事が増えないように、最後まで仕事をし続けた、ということです。

 

大統領選が迫り、後任の指名が、選挙の前か後がが、注目されて

 

います。最高裁判事の存在感は大きく、9人の判事は定年も任期

 

もなく、大統領より長期にわたって米社会に影響を与えます。

 

同性婚や人工妊娠中絶の是非など、米国を二分する問題に判断

 

を下してきています。キンズバーグ氏の死去により、判事は共和

 

党の大統領によって指名された保守派が5人、民主党の大統領

 

によって指名されたリベラル派が3人になりました。今年は、妊娠

 

の中絶規制や不法移民の子どもの救済制度をめぐって、保守派

 

のロバーツ長官がリベラル派と一緒に多数意見を構成し、

 

トランプ政権に不利な判決を言い渡した、ということもありますが、

 

一般的には、保守派は保守的な判断をしてきています。

 

キンズバーグ氏が女性の性差別と戦う若き日々を描いた映画

 

「ビリーブ 未来への大逆転」が、2018年に米国で公開され、

 

日本でも話題になっています。自らの差別体験をもとに、人種

 

団体の全米市民自由連合(ACLU)幹部などとして、女性の権利

 

拡大を求める訴訟で指導力を発揮しました。1993年に民主党の

 

クリントン政権のもとで、米史上2人目の女性最高裁判事に任命

 

されました。キンズバーグ氏が関わった数多くの司法判断のうち、

 

重要なものは、1996年の判決で、入学者を男性に限定した

 

南部バージニア州立士官学校の決まりを違憲としたこと。南部

 

ジョージア州での1999年の判決で、精神障害者は一定の条件下

 

では、施設よりも地域社会の中で暮らす権利があるという判断を

 

下し、障害者の権利を広く認めたこと。2000年の判決で、南部

 

サウスカロライナ州を流れる河川の汚染を巡って、流域に住む

 

住民には企業側の法的責任を追及する原告適格があると認め、

 

環境権を擁護したこと、を専門家があげています。ミレニアルと

 

呼ばれる30代以下の世代は、ギンズバーグ氏の名前の頭文字を

 

とって「RBG」と呼び、尊敬される存在だった、ということです。

 

数々の功績に敬意を表し、心からご冥福をお祈りします。

 

大統領選のひとつの争点ともなりそうな新しい最高裁判事に注目

 

したいと思います。