このところ、毎年のように多発している大きな水害では、地価が

 

安いなどの理由で、リスクの高い場所にある高齢者施設が被災

 

するケースが、目立っています。熊本県南部を4日に襲った豪雨

 

では、球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」が浸水し、入所者

 

14人が犠牲になりました。「日ごろの訓練はできていたし、あの時

 

はみな自らからの命を顧みずに救助に当たった。一体どうすれば

 

よかったのか」と、施設の責任者は語っています。他にも、2009

 

年には、山口県防府市の特別養護老人ホーム「ライフケア高砂」

 

で、豪雨で裏山が崩れ、7人が死亡しています。この施設は、

 

1999年に建てられ、2001年に土砂災害防止法が施行され、

 

熊本県は2008年に土砂災害警戒区域に指定し、砂防工事を

 

検討していたが、間に合わなかった、ということです。被災後の

 

2012年に、3キロ離れた警戒区域外に再建し、居室を2、3階に

 

移したそうです。2016年の台風では、岩手県岩泉町の高齢者

 

グループホーム「楽ん楽ん(らんらん)」の入居者9人が、川が氾濫

 

して亡くなりました。これを受けて、2017年に、水防法と土砂災害

 

防止法を改正し、浸水想定区域や土砂災害警戒区域内で、自治

 

体が定めた施設に避難計画の作成と訓練の実施が義務付け

 

られた、とのこと。しかし、専門家は、「多くの施設で実効性のある

 

避難計画を作れていないのではないか。行政は、施設任せに

 

せずに、計画に専門家の知見を取り入れ、消防団などと連携して

 

実行できる態勢を整える必要がある」と話しています。立地問題を

 

解決するために、今年6月に改正都市計画法が成立し、土砂災害

 

などの危険が高い「レッドゾーン」での開発規制を強化し、病院や

 

福祉施設、学校などの建設を認めないことになりました。しかし、

 

新設は禁じられますが、既存の施設には補助金で移転を促す

 

だけで強制力はない上、施行も2年後ということです。毎年、

 

大きな水害が繰り返されているのですから、実効性のある対策が

 

急がれると思います。