中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会で、昨日30日、

 

香港での反体制的な言動を取り締まる「香港国家安全維持法」が

 

成立し、即日施行されました。今日7月1日は、香港返還23年に

 

当り、この日に合わせて施行しました。これによって、中国当局が

 

香港の治安維持に直接介入することになり、高度な自治を認める

 

「一国二制度」が骨抜きにされ、自由が揺らぐことで、経済への

 

影響も懸念されています。1997年7月1日に、香港の返還式典

 

で江沢民国家主席が「中国は、一国二制度と高度な自治を堅持

 

する」と語り、50年は変えないと宣言したのに、23年で反故に

 

することは、国際公約を破ったことになります。国家安全法の成立

 

を受けて、2014年の雨傘運動の中心メンバーだった周庭さんや

 

黄之鋒氏が所属する政治団体「香港衆志」は、30日、解散を宣言

 

しました。黄氏は、「香港で民主化運動をすれば、命に関わると

 

いっても過言ではない」と危機感をあらわにしている、と報じられて

 

います。「香港独立」を主張する二つの政治団体も香港本部の

 

解散を発表していて、運動が委縮せざるを得ない状況になって

 

います。香港の法律より国家安全法が優先し、中国政府が

 

香港に「国家安全維持公署」を新設し香港政府を監督指導し自ら

 

も犯罪の処理をする、香港行政長官が裁判官を任命する等、

 

中国政府に反対する活動をすれば、最高で終身刑になる、という

 

ことでは、民主化を求める活動が、できるわけがありません。

 

日本政府も30日、香港の統制強化を目的とした「香港国家安全

 

維持法」を成立させた中国に対し遺憾の意を表明しました。河野

 

防衛相は、「習近平国家主席の国賓来日に重大な影響を及ぼす

 

と言わざるを得ない」と述べています。台湾の蔡英文総統は30

 

日、「中国が香港について約束した「50年不変」は、今回の法

 

律によって損なわれた。約束の不履行について、とても失望して

 

いる」「香港の人々に人道上の更なる支援を提供する」と述べ

 

ました。EU首脳は、22日に習近平国家主席たちと会談し、法制化

 

の再考を求めていました。欧州議会は、EUやEU加盟国に対し、

 

中国を国際司法裁判所に提訴する検討を促す決議を採択して

 

います。フォンデアライエン欧州委員長は「新法制は香港の基本

 

法と相容れないばかりか、中国の国際公約を違えるものである。

 

深く懸念している。」「(国際社会で)情報交換し、EUの各組織とも

 

連携して状況を注意深く見極める」と述べています。香港の経済

 

界では、外国企業を中心に不安が広がっています。国家安全法

 

の運用や米国の制裁次第では、投資マネーや専門人材が流出

 

し、国際的な金融・貿易センターの地位が揺らぐ恐れがある、と

 

されています。香港で民主化を求める人たちが、海外に移住する

 

ケースも相次いでいる、ということです。香港から目が離せない

 

状態が続きます。