中国の全国人民代表大会(全人代)は、昨日28日、香港で

 

反体制的な言動を取り締まる「国家安全法制」の導入について

 

決定を採択しました。立法権を持つ全人代常務委員会が、関連

 

法案の制定作業に着手する、ということです。法律は、早ければ

 

8月にも可決し、施行されます。香港で続く共産党政権に批判的

 

な抗議デモを抑え込む狙いで、言論や集会の自由が制限される

 

可能性が高く、高度の自治を保障する「一国二制度」は存続の

 

危機に直面しました。国会安全法制の決定骨子は、〇香港に

 

干渉する外国勢力などに対抗する 〇香港で行う分裂、転覆、

 

浸透、破壊活動を処罰 〇中国政府が香港に関係機関を設置

 

〇全人代常務委員会が関連法案を制定、というものです。中国

 

と対立している米国トランプ政権は、国際社会で香港情勢への

 

懸念が拡大する状況を好機とみて、攻勢を仕掛けるかまえで、

 

米中新冷戦の火種にもなる、といわれています。日本も、菅

 

官房長官が「議決が国際社会や香港市民が強く懸念する中で

 

なされたことや、香港の情勢を深く憂慮している」と表明しました。

 

秋葉外務事務次官も、昨日28日、中国の孔ワンユー駐日大使を

 

外務省に呼び、「深い憂慮」を強く申し入れました。香港立法院

 

(議会)の民主派議員からは、一国二制度に対する「死刑宣告」だ

 

と将来を悲観する声が上がった、とのこと。香港中心部では、

 

「香港独立」要求や中国政府に抗議するデモが行われ、約100人

 

が参加しました。前日の27には抗議に集まった市民など300人

 

超を警察が逮捕しました。多くの香港人は、国家安全法制の導入

 

に反対してきて、2003年には50万人がデモをし、撤回させ

 

ました。「逃亡犯条例」改正に反対した昨年の大規模デモでも

 

撤回させることができましたが、香港での審議ではなく、中国大陸

 

での立法を阻止することは困難とされています。香港の繁栄が

 

維持されてきたのは、民主的な市民社会があったからで、この

 

法律が施行されると、香港市場の評価も下がるという専門家も

 

います。中国自身が、対外的に宣言した公約の「一国二制度」

 

の堅持を覆すことは、国際社会での中国の評価を下げることに

 

なります。香港の若い活動家が、「この法律で、中国に逮捕され

 

たら、それは死を意味する」と言っていて、香港の今後が懸念され

 

ます。国際社会が、香港の民主主義、一国二制度を守る動きを

 

することを願います。