超党派の議員立法「子どもの貧困対策推進法」が作られ、それに

 

基づいて2014年に決定された「子どもの貧困対策大綱」は5年

 

ごとに見直すことになっていて、政府は、昨日29日の閣議で

 

新たな大綱を決定しました。子どもの貧困については、民主党

 

政権の時に、その数字を初めて明らかにしました。その後、

 

超党派で法律が作られました。5年前には、ニュースや新聞記事

 

でも、わりと大きく取り上げられましたが、今回は、新聞も下の方

 

に小さく出ているだけで、取り扱いが小さくなり、子どもの貧困への

 

注目度が下がっているようで、気がかりです。現在も7人に1人の

 

子どもが貧困で、OECD加盟各国の中でも高い比率になって

 

います。2014年策定の前回大綱にあった貧困に関する指標

 

25項目のうち、子どもの貧困率など14項目は残した上で、

 

ひとり親の正規雇用割合、食料・服が買えない経験、公共料金の

 

滞納経験など25項目を新たに加え、計39項目にしました。また、

 

これまで都道府県に努力義務として課していた子どもの貧困対策

 

に関する計画策定を市区町村にも広げ、家庭により身近な

 

市区町村に対象を拡大することで、子どもへの支援を強化

 

します。教職員などの指導体制の充実や高校中退者への学習

 

支援、就職のための情報提供などをさらに強化する方針、という

 

ことです。最初に大綱が出た時も指摘されていたように、予算措置

 

を伴うものは少ないので、効果があまり出ていないのだと思い

 

ます。ひとり親家庭への児童扶養手当の増額は実現していません

 

し、大学進学率が低いことへの対策としての給付型の奨学金も

 

額も人数も少ないままです。そうした中で、公だけに頼っては

 

いられないということで、私も軽井沢で実施している、いわゆる

 

子ども食堂など、市民による支援が増えているのは、よいことだと

 

思います。それに加えて、離婚後の養育費を増額する新しい基準

 

が見直されることになったのは、実現すれば力になるものだと

 

思います。日本で子どもの貧困が増加したのは、男性より賃金が

 

低いシングルマザーが増えたため、とされています。離婚訴訟

 

などで使われている養育費の算出基準は、2003年に示され

 

ましたが、「金額が低く、母子家庭の貧困の原因になっている」

 

という批判が強くありました。現在は、例えば養育費を支払う夫の

 

年収が450万円で、15歳の子を養う妻の年収が100万円の

 

場合、1ヶ月あたり「4万円超6万円以下」となります。日弁連は、

 

2016年に、現行の1.5倍程度に引き上げる算定方式を公表し、

 

改善を求めていました。新しい基準は、最高裁の司法裁判所が

 

裁判官4人に委託し研究を続け、今年12月23日に詳細が公表

 

される、ということです。ひとり親家庭の貧困率は、2015年に

 

半数を超える50.8%に上っています。算定基準を上げるだけ

 

でなく、金額を決めても実際に受け取っている家庭が少なすぎる

 

ことへの対策が必要です。兵庫県明石市では、昨年から行政が

 

支援しています。「養育費立て替えパイロット事業」として、市が

 

業務委託した保証会社が、養育費の取り決めをしたひとり親家庭

 

との間で養育費保証契約を締結し、初回の保証料は市が負担

 

します。養育費の不払いがあった場合は、同社がひとり親家庭

 

に対し養育費を立て替え払いし、別居親に対して立て替え分を

 

督促して回収する、という仕組みです。スウェーデンなどでは、

 

行政が立て替え払いしています。国が動かない中で、先駆的な

 

自治体が道を開くことを期待します。子どもの貧困への対策は、

 

多様なものを総合的に行うことが必要だと考えています。