およそ50万人が受ける大学共通テストについては、先日延期が
発表された英語の民間試験だけでなく、国語と数学の記述式問題
にも問題があると指摘されています。記述式の問題の採点は、
採点者の能力がなければできません。評価を一定にしようと
すれば、機械的に採点するようになり、そうなると表現力や思考を
問うための記述式の意味が薄れてしまいます。限られた能力の
ある人が採点することを各大学で行っているので、無理して共通
テストでする必要はないのではないでしょうか。現在考えられて
いる記述式問題の採点は、20日位で採点しなければならない
ので、民間の業者に委託され、そこでは学生アルバイトも採点を
する、とのこと。これでは、受験生が不安に思うのは当然のこと
です。また、採点を請け負う業者は、試験の前に設問の内容や
正答例を知らされることも問題です。学生アルバイトも含めた
多くの人がかかわり、問題が漏洩する心配があります。専門家も、
事前に設問や正答例を知らせることは、あってはならない、と
しています。また、自己採点が難しく、試行テストの国語の記述式
問題では、実際の採点と一致しない割合が3割に達した、と報じ
られています。自己採点をもとに出願する大学を決める大学生に
とって、将来の選択を誤ることにもなりかねません。記述式の評価
を各大学が成績に、どう使うかもはっきりしない、ということです。
大学の教員などが、共通テストの延期を求める声明を出し、
高校生たちが4万人を超える署名とともに文部科学省に中止を
申し入れています。国会でも野党が導入中止の法案を共同で
提出しています。文部科学省は、再来年1月からの共通テストを
実施する方針ですが、国語の記述式問題の成績を2次試験の
足きりに使わないよう国公立大に求めるということで、評価に
使わない試験を、なぜやるのか不思議です。文科省は、一度
決めたからというメンツにこだわらずに、現場の声を聞いて、国会
での審議もふまえて、見送る決断をすべきだと思います。