安倍首相は、昨日4日、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と、ASEAN(東南

 

アジア諸国連合)首脳会議のために訪れているタイのバンコク郊外で、約10分間

 

対話をしました。着席での対話は、昨年9月の米ニューヨーク以来で、約1年1ヶ月

 

ぶり、ということです。韓国側の要請で急遽決まったそうで、母国語の通訳は

 

間に合わず、英語の通訳でした。文大統領は、10月の天皇陛下の即位の礼

 

正殿の儀の際に訪日した李首相に親書を託し、安倍氏との会談を希望すると

 

伝えていました。実現した対話で、文氏は、日韓の協議のレベルの格上げに言及

 

し、韓国大統領府は、対話を通じた懸案解決で両首脳が一致したと説明して

 

います。一方安倍氏は、元徴用工訴訟問題について「日韓請求権協定に基づく

 

日本の原則的立場に変更はない」と伝えた、とのこと。通訳を交えての10分では、

 

実質的な話にはなりませんが、関係改善のためには、まずは対話をした、という

 

こと意味があると思います。文氏が態度を変えてきたのは、側近の前法相の

 

辞任、さらに逮捕されるかもしれないということや、期限切れが迫るGSOMIA(軍事

 

情報に関する包括的保安協定)を巡っては米国も協定維持を促していること、等

 

があり、支持率も下がっているから、といわれています。日韓関係が冷え切って

 

いることで、日本から韓国への食品輸出は急減しています。10月末に財務省が

 

発表した貿易統計では、日本から韓国に向けた9月のビールの輸出金額は59万

 

円で、前年同月より99・9%減になっています。日本が世界に輸出したビールの

 

うち、昨年は韓国が主要輸出先で6割に上っていました。清酒も75.4%減、

 

しょうゆも7割近く減、粉末タイプの味噌汁はほぼ止まっている、など多くに影響が

 

出ています。9月に日本を訪れた韓国人旅行者数は、前年同月より58.1%

 

減って20万1200人でした。減少は3ヶ月連続で、下げ幅は急減した8月の

 

48%からさらに拡大した、と観光庁が発表しています。経済への影響だけでなく、

 

長年続いている人の交流、イベントなども中止が相次ぎ、残念な状態です。

 

政権の方向性が、日韓関係改善にも大きく作用すると思われます。それぞれが

 

意地を張っていてよいことは何もないと思います。12月には、中国が議長国となる

 

日中韓3ヶ国サミットが、四川州成都で開催されることになっています。今回の

 

対話をきっかけに、関係が改善されることを望みます。