韓国大統領府は、昨日22日、日本と結んでいる軍事情報包括保護協定
(GSOMIA)を破棄することを決めた、と発表しました。日本の対韓輸出規制強化が
「両国間の安保協力環境に重大な変化をもたらした」ことを理由にあげ、協定維持
が「韓国の国益にそぐわないと判断した」と表明した、と報じられています。元
徴用工判決や輸出規制の応酬で泥沼化していた日韓関係は、北朝鮮などの脅威
に対して、日米間の協力を軸としてきた安全保障体制を揺るがせ、日韓関係が
さらに悪化することが、避けられない情勢になっています。日韓の協定GSOMIA
は、軍事上の機密情報を共有する際、第三国への漏洩を防ぐため、情報の保護を
義務付ける協定です。2016年11月に締結され、効力は1年間で、どちらかが
破棄を通告しない限り、毎年自動更新される仕組みです。協定によって、北朝鮮
の核・ミサイルの脅威に対し、迅速な情報交換によって、日韓が連携して対処
できる効果があります。日本は、同盟国の米国から、より詳細な関連情報の提供
を受けているとされ、影響は限定的という見方もある、とのこと。保守政権の時に
締結した協定に、文大統領を支持している革新勢力は根強く反対していることや、
文政権の有力者が家族のスキャンダルを指摘されていて、そこから目をそらす
ため、という指摘もあります。日韓の軍事情報協定が破棄されると、中国、ロシア、
北朝鮮を利することになります。自衛隊が捕捉した北朝鮮の弾道ミサイル発射の
分析情報を韓国側が得にくくなり、韓国軍には大きな痛手になるという専門家の
意見も伝えられています。米国のポンぺオ国務長官は「失望した」と、強い口調で
述べています。直前までは、この協定は維持されるとみられていて、日韓外相
会談でも、そういうトーンでした。韓国の外相も、決定を知らなかった、と伝え
られています。韓国内でも、政界や社会の反応は、「歓迎する」「最悪の決定だ」
と、二分されているそうです。トランプ米大統領が深入りを避けたため、この事態が
回避できなくなった、という見方もあります。元徴用工問題から、輸出規制の問題
へ、そして安全保障にまで広がってしまった日韓の対立。日本にとっても、韓国に
とっても、よいことは何もないと思いますが、国内向けの姿勢を強くしすぎて、
戻れなくなっているようにみえます。もっと、将来を見据え、地域の安全保障のこと
等も熟慮して対応してもらいたいものです。日本も、もっと対話での解決を探った
ほうがよいと思いますが。