全国の児童相談所が、2018年度に児童虐待の相談・通告を受けて対応した
件数が15万9850件(速報値)で、過去最多だったことを、昨日1日、厚生労働省
が発表しました。前年度より2万6072件多く、調査を始めた1990年度から28
年連続で増えています。連携が進んでいる警察からの通告が約50%と半数を
占め、近隣知人からが約13%でした。内容別では、子どもの前で配偶者に暴力
を振るうことも含めた「心理的虐待」が8万8389件(55.3%)、「身体的虐待」が
4万256件(25.2%)、「ネグレクト(育児放棄)」が2万9474件(18.4%)、
「性的虐待」が1731件(1.1%)でした。対応件数が増えたことについて、厚生
労働省の担当者は「児童相談所と関係機関との連携強化のほか、国民の虐待
への意識が高まったことが影響した」と、通告自体が増えていると分析している、
と伝えられています。通告があった子どもについて、安全を48時間以内に確認
する「48時間ルール」をめぐる調査では、昨年7月~今年6月に対象になった
子ども述べ約15万4千人のうち、約8%で48時間を超えていました。背景には、
児童相談所の深刻な人手不足があります。2017年度は、虐待以外の相談を
含めて、児童福祉司1人当たり平均117件の新規相談を受けているそうです。
政府は、2022年度までに児童福祉司を2020人増やす計画を前倒しして、
2019年度中に1070人増やす方針です。何よりも早く増員して、一人でも多く
虐待で被害を受ける子どもを救ってほしいと思います。これだけ法改正などを
し、意識は高まっても、2017年度には、虐待で65人もの子どもの命が失われて
います。
子どもの虐待に関して、気になった最近の報道があります。虐待などの理由で
児童相談所に保護された子どもたちが入っている「一時保護所」で、子どもの人権
侵害がある、ということです。東京都の第三者委員の弁護士4人が手分けして、
7カ所の一時保護所を、それぞれ毎月1回ずつ平均5時間訪問して調査し、
子どもや職員の話を聞き、一緒に食事をするなどして生活状況も観察しました。
意見書では、一時保護所によって実情は少しずつ異なるものの、私語禁止や
会話を制限するなどのルールを課すほか、子ども同士が目を合わせることまで
禁じる指導をしているところがあると指摘しています。「どのルールも管理思考で、
子どもの人権擁護の視点に欠ける」としていて、その通りだと思います。また、
ルールに反した子どもに対して、壁に向かって食事をする、廊下の衝立の中で
辞書を書き写す、体育館の中やグラウンドを何周も走る、などが強いられていて、
「ルール違反に対する指導の名の下に罰を与えているとしか言えない」などの
指摘をしています。入所率が、学齢男子で150%、女子で138%と定員超過に
なっていて、職員が不足していることもあげられています。一時保護所内での
子どもたちの処遇については、各地で問題が指摘されていますが、第三者の立ち
入りが極めて難しいため、これまで具体的な問題点が明らかになっていません
でした。東京都では、昨年度から一時保護所についての第三者委員制度を導入
していて、その調査結果が明らかにされたのですから、それをいかして、辛い状況
にあった子どもたちが、保護された場所で、さらに人権侵害の扱いを受けることが
ないように、自治体、国は取り組んでほしいと思います。