親による体罰禁止を明記した児童虐待防止法と児童福祉法の修正を巡って、

 

自民、公明両党と、対案を提出している立憲民主党などの野党は、一昨日22日、

 

都道府県や児童相談所が再発防止に向け、虐待をした保護者に医学的・心理的

 

な指導を行うよう努めることを盛り込んだ修正案で大筋合意しました。安倍首相が

 

出席する24日の衆院厚生労働委員会で修正案を採決し、28日に衆院本会議を

 

通過させ、参院審議の後、今国会で成立する見通しです。この改正によって、来年

 

4月から「しつけ」の名目での体罰禁止が法制化されます。昨年3月に東京都

 

目黒区で5歳の船戸結愛ちゃんが、今年1月には千葉県野田市で10歳の栗原

 

心愛さんが、「しつけ」と称する虐待事件で死亡するなど、虐待死事件が次々に

 

起こったことから、法改正に向けての動きが続いていました。与野党が合意した

 

主な項目は、○虐待をした保護者への再発防止プログラム実施を努力義務に

 

 ○政令で定める基準に沿った児童福祉司の配置の必要性を明確化 ○子ども

 

の転居に伴う児童相談所間の引き継ぎを徹底させる ○子どもの意見が尊重

 

される仕組みを施行後2年をめどに検討、となっています。最後の項目の意味と

 

しては、「体罰禁止」をどのように盛り込むかや、民法上の「懲戒権」の見直し方も

 

修正協議の焦点になりましたが、施行後2年をめどに検討、と先送りされたという

 

ことで、残念です。民法に、親権者は子どもを「監護および教育に必要な範囲内で

 

懲戒できる」という規定があり、野田市の事件でも、父親は虐待の理由を「しつけ」

 

と供述しています。政府案は、「民法の規定による・・・範囲を超える行為により

 

懲戒してはならない」としていて、野党は「懲戒権の範囲内なら体罰は認められる

 

余地がある」と反発し、懲戒権の規定の早急な削除を求めていましたが、「国民の

 

間でも様々な議論がある」と安倍首相が述べ、修正に応じなかった、と報じられて

 

います。懲戒権の議論は、2010年に全国児童相談所長会が、相次ぐ虐待問題

 

を受けて児童相談所に実施したアンケートで、懲戒権を「削除すべきだ」が76%

 

だった、とのこと。しかし、法制審議会の部会で「親がしつけすらできなくなるとの

 

誤解、批判も出てくる」という慎重論があり、削除を見送った、という経緯があり

 

ます。今回は、削除する機会だったのに、なぜまた先送りか、強い疑問を抱き

 

ます。人間はことばがあるのですから、たたくなどの暴力を持ってではなく、

 

ことばでしつけをするべきです。懲戒権の範囲とは、どこまでをいうのか、今回の

 

改正では、親の体罰を認める範囲がはっきりせず、実効性が心配です。また、

 

児童相談所では、ただでさえ手いっぱいなのに、対応が難しい、暴力をふるった

 

保護者への指導などの再発防止プログラムを負わせるのは、無理ではないで

 

しょうか。児童虐待もDV(配偶者への暴力)も、もとを絶たなくては解決にはなら

 

なないので、法案作成や改正案作成の際に、何度も加害者更生プログラムを盛り

 

込めないか議論しました。しかし、更生させるための専門職が、日本はあまりに

 

少なく、実現しなかった経緯があります。是非、専門職の養成に力を入れてほしい

 

と思います。児童相談所に丸投げするだけでは、実効性は、難しいと思います。

 

今回の法案には、児童相談所の中で、相談と介入の部署を分けたり、弁護士の

 

配置を進めたりする対策も盛り込まれているので、できることを最大限にして

 

いってほしいと思います。