先日、私も学者の友人たちと、最近の性暴力についての無罪判決、司法の判断は
おかしいという話をしていたところ、「性暴力 無罪判決続き疑問」という報道が
ありました。強姦罪が強盗よりも軽い罰則ということ等をただす刑法改正が行われ
たのに、男性の裁判官による司法判断が、女性の意思に反した性交だと認め
ながら、「抵抗が著しく困難だったとは言えない」「抵抗できない状態だと男性が
認識していなかった」などの理由で無罪とする判決が続いていて、なぜだという
大きな疑問を感じます。中でも、3月26日に名古屋地裁岡崎支部で言い渡された
19歳だった実の娘への2件の準強制性交罪に問われた男に対して、「娘の同意
は存在せず、極めて受け入れがたい性的虐待の当たる」としながら、「抵抗不能
だったとはいえない」として無罪にした判決は、理解できません。罪が成立する
ためには、被害者の抵抗が「著しく困難」になるほどの「暴行・脅迫」や「抗拒不能」
が必要だと解釈されている、と報じられています。この判決では、被害を受けた
女性が中学時代から性的虐待を受け、抵抗し難い状態にあったことと、事件の
少し前にも父親が暴力をふるったことは認めながら、女性が父親に「服従・盲従
せざるを得ないような強い支配従属関係にあったとは認められない」などとして、
抵抗が「著しく困難」とまでは言えないとしてます。この判断に対して、専門家から
は「性的虐待を認めながら、”人格を完全に支配していたとまでは認めがたい”
から無罪というのは理不尽だ」「心理的な抗拒不能は広く認められており、過去の
裁判例に照らしても疑問が残る」としている、とのこと。公判では、「女性が心理的
に抵抗できない状態にあった」という精神科医の鑑定も提出されていたのに、
この判決は、受け入れがたいと思います。また、3月12日には、福岡地裁久留米
支部が、被害者が「抗拒不能」と認められても、それに「乗じた」行為でなければ、
準強制性交罪は成立しないとして、無罪判決が言い渡しています。判決では、
女性は酩酊し「抗拒不能」だったと認めながら、ある程度ことばを発することが
できたことなどから、男性は「女性が許容している」と誤信する状況にあったとして
無罪としています。こうした性暴力に対して、抵抗できない弱い立場に置かれた
女性に無理解な判決をめぐって、11日夜には、東京駅近くの路上に、400人以上
が、「#Me Too]「裁判官に人権教育を!」などのプラカードを掲げて集まり
ました。勇気をもって訴えた被害女性が、人権を守られず、二次被害にあうような
判決には、Noの意思表示をし、また、もっと女性の裁判官を増やすようにしていく
ことが必要だと思います。