東京の公立福生病院で、44歳の女性患者の人工透析が中止され、およそ1週間

 

後に死亡した問題が、ニュースになっています。病院側が、治療中止の妥当性に

 

ついて、倫理委員会で協議せず、東京都が第三者のチェック体制が不十分

 

だったなどとして、口頭で指導していたことがわかりました。昨年8月のことです。

 

東京都によると、女性は昨年8月9日、他の医療機関からの紹介で公立福生病院

 

を訪れ、病院側が、首に管を入れて治療を続けるほか、透析を中止する選択肢が

 

あることを示し、女性は中止を選び、夫も同席する場で意思確認書に署名しま

 

した。その後、女性は体調不良を訴え、14日に入院し、16日に死亡しました。

 

女性が死亡する前日に「こんなに苦しいなら、また透析しようかな」と発言していた

 

とみられることを担当医などが都の調査に証言した、ということです。人工透析を

 

中止する場合について、日本透析医学会は、患者の状態が極めて悪いときや、

 

続けると命を損なう危険性が高い場合に検討できると指針で示しています。

 

今回の女性の場合は、この基準に当てはまるとは考えられません。関係者に

 

よると、女性と担当医が透析を中止するにあたって、病院では、その妥当性に

 

ついて、ほかの分野の専門家を含めて検討する「倫理委員会」を開いていま

 

せん。日本透析医学会では、透析を見合わせる時に倫理的な問題がある場合、

 

倫理委員会や外部委員会などの助言があることが望ましいことなどを提言して

 

います。東京都は、第三者によるチェック体制が不十分だったとして、複数の医師

 

がチェックしたり助言したりする仕組みを作るよう、口頭で助言した、ということ

 

です。この福生病院では、人工透析を始める段階でも、受けない選択肢を患者に

 

示していたとされ、中止したこの患者とは別に、およそ20人が亡くなっているとの

 

情報がある、と報じられています。私の義理の母も、長年、人工透析をしていま

 

した。人工透析は、週に3回は受けなければならず、その日は起き上がることも

 

できないほど疲れ果てていました。人工透析は高額な医療費がかかることもあり、

 

死を選べるならそうすべきという人が出てくるのではないかと、患者団体から懸念

 

する声が上がっている、ということです。患者の尊厳、自己決定には、どのような

 

条件整備が必要なのか、今回の実態を明らかにして、真剣に考える必要があると

 

思います。