首相官邸が、官房長官記者会見での東京新聞記者の質問を「事実誤認」と
断定し、質問制限ともとれる要請文を官邸記者クラブ宛に出したことに対して、
「特定記者の排除を狙い、国民の知る権利を狭めるものだ」という批判の声が
あがっている、と報じられています。要請文は、昨年12月28日に、官邸の上村
報道室長名で官邸記者クラブに貼りだされました。それによると、26日の記者
会見で「東京新聞の特定記者による質問」に事実誤認があった、という内容です。
米軍普天間飛行場移設先の沖縄県宜野湾市を巡って「埋め立て現場で赤土が
広がっている」と指摘していました。これに対して要請文は汚濁防止措置を講じて
いると反論し、記者クラブに問題意識の共有と、正確な事実を踏まえ発言する
ことを求めました。官邸側は、質問制限や記者排除を狙ったものではないと主張
していますが、新聞労連は、2月5日に抗議声明を出しました。為政者の見解を
質すことが記者の責務だとし、事実関係をひとつも間違えず質問することは
不可能、と主張し、意に沿わない記者を排除するような要請は「国民の知る権利
を狭め、容認できない」としています。事実でないなら、会見の場で、そう否定
すればよいので、要請文を出すなど高圧的なことをしたことは、批判されて当然
だと思います。赤土が混じるとサンゴが死滅し、環境破壊につながりかねません。
工事はバリケードの内側で行われていて、記者は現場に近づけません。そうした
中での質問で、事実誤認を言い立て、「問題意識の共有」を求めることは、憲法が
保障する国民の「知る権利」を実現する役割をもつメディアに対して、あってはなら
ないことだと考えます。国会でも、批判する質疑が行われています。2月26日の
記者会見でも、この記者が「この会見を一体何のためにの場だと思っているのか」
と質問したのに対して、菅官房長官は、「あなたに応える必要はありません。」と
答えた、とのこと。記者会見は、記者が政府に事実確認を求める場でもあります。
「事実誤認」と攻撃する政府の姿勢は、辺野古の問題で報道機関全体を威圧し、
委縮させることを狙っていると受け取られても仕方ない、という指摘があり、その
通りだと思います。