日産自動車の代表取締役会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が、自らの報酬を

 

約50億円少なく有価証券報告書に記載した疑いがあるとして、昨日19日、東京

 

地検特捜部は、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで

 

、ゴーン会長と同社代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(63)を逮捕しました。

 

横浜市の日産本社など関係先を家宅捜索し、社内の指揮系統の解明を進める、

 

と報じられています。販売台数世界2位のルノー・日産・三菱自動車連合に大きな

 

打撃となることは必須で、大きな衝撃が、日本だけでなく世界に広がっています。

 

2人の逮捕容疑は、共謀してゴーン容疑者が2011年3月期~2015年3月期の

 

5年間に計約99億9800万円の金銭報酬を受け取ったのに、計約49億8700万

 

円と過少に記載した有価証券報告書を関東財務局に提出した疑いで、特捜部は

 

認否を明らかにしていません。ゴーン容疑者は、1999年、経営危機に陥っていた

 

日産自動車が資本提携したフランス自動車大手ルノーから最高執行責任者

 

(COO)として派遣され、短期間で業績をV字回復させたカリスマ経営者でした。

 

大規模なリストラなどでコストカッターとも言われていて、高額報酬が、たびたび

 

批判されていた、ということです。これだけ多くの報酬を受け取っていて、虚偽記載

 

をしたのであれば、許せないことです。日本では、「長者番付」と呼ばれた国税

 

当局による高額納税者リストの公示が2005年に廃止され、大企業のトップなど

 

富裕層の報酬額を公的にチェックできるすべはなくなっていました。欧米では、

 

経営の透明化を担保するため、証券市場で役員個人の報酬を開示する仕組み

 

の制度化が進んでいます。日本でも、民主党政権時代の亀井静香金融担当相

 

がプライバシー侵害という反対の声を押し切って、年間1億円以上の報酬を得た

 

場合、有価証券報告書への総額の記載を義務付ける制度が2010年3月期決算

 

から始まった、ということです。ゴーン容疑者の容疑が事実なら、制度の趣旨を

 

踏みにじる行為です。捜査には、日産社員が協力したとされ、見返りに刑事処分

 

を軽くする司法取引制度が適用されました。10年以上トップとして手腕をふるって

 

きたカリスマ経営者の失脚で、激震が走っています。日産自動車は、昨日夕方、

 

ゴーン容疑者の会長と代表取締役の職を速やかに解くことを取締役会に提案する

 

と発表しました。ケリー容疑者の解職も提案します。ゴーン氏は、昨年3月末に

 

社長を退きましたが、依然としてルノーCEOとして影響力を持ち続けていた、との

 

こと。日産では、昨年秋に検査不正問題が発覚し、信頼の回復に努めていた矢先

 

の今回の逮捕です。あまりに1人に権力が長期間にわたって集中しすぎていたの

 

では、ないでしょうか。今回の虚偽記載の事実関係を明らかにし、迅速な対応で、

 

致命的なダメージを防いでもらいたいと思います。